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「もしもし? 丈士さま?」 『あ、いや。それは、その。よ、よくやったな』 「僕、これからどうしたらいいんでしょうか」 『うん、そうだな。ま、まぁ、とりあえず。そのまま、怜士お兄様の監視を続けろ』 「はい」  もう、切るぞ、と早口で告げた後、丈士の通話は乱暴に途絶えた。 「丈士さま。何か、変な人だな」  怜士さまのことを、あいつ呼ばわりしていたのに、最後には。 「怜士お兄様、とか言ってたし」  悪役のはずの丈士だが、妙にその悪意に、ほつれたところが見える。  間の抜けたところが、ある。 「ホントに、悪役なのかな。あの人」  ホントは、怜士さまのことが好きなんじゃないのかな。  そこまで考えたところで、大きなあくびが出た。  難しい問題は、ひとまず置いて。 「眠い。寝ちゃおう」  倫はそのまま、ベッドに倒れ込むように横になった。 「明日10時に、また怜士さまに会える……」  それは、幸せな予定だった。

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