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「おはようございます、怜士さま」 「うん。おはよう」  明るい倫の笑顔に、怜士も微笑んでくれた。  一段低いテラスに立つ倫に、怜士は登壇を許し、彼に椅子を勧めた。 「では。わたくしは、お茶の支度をしてまいります」  そう言い残して消えた、和生。  しかし倫は、昨日のように心細くはならなかった。  ほとんど、いや、すっかり怜士に安心感を抱いていた。 「昨夜は」 「昨夜は」  二人同時に口を開き、同じ言葉が重なった。 「あ、すみません。怜士さまから、どうぞ」 「いや、倫から話してもらおう」  そして怜士は、人払いをした。  周りに控えていた使用人が離れ、会話が聞こえない距離まで移動した。  それを確認し、怜士は倫に視線をよこした。  これはもう、絶対に自分の方から話さなくてはならない雰囲気。  倫はそう判断すると、まずは頭を下げた。 「昨夜は、お部屋まで送っていただいて、ありがとうございます」  それから。 「怜士さまのところで眠ってしまって、申し訳ありませんでした」  言うべきことは事前に考えていたので、倫は素直にそう話すことができた。  だがしかし。 「それだけか?」 「えっ」  怜士の言葉に、倫はうろたえた。 (それだけか、って。僕、何か他にも粗相をしたかな!?)  どきどきと、倫の心臓は速く打ち始めた。

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