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第十章 怜士の気持ち

 それだけか?  この怜士の言葉に、倫は動揺した。 (ぼ、僕。何か怜士さまを怒らせるような事、やらかした!?)  途端に、落ち着きを失った、倫だ。  しかし怜士はわずかにうつむき、その長い指を組んで、逆に問いかけてきた。 「倫は、怒っては、いないか?」 「えっ?」 (どういうこと? 怜士さま、何か僕を怒らせるような事、やらかした?)  戸惑っている倫の気持ちを感じ取ったのか、怜士の方から語り始めた。 「つまり、その。昨夜の私は、強引だった。拒否する君の言葉を、無視したり、と」 「そ……、う、でしたっけ……?」  倫は、昨夜のことを思い返した。  朝の爽やかな光の下でそれを考えることは、少し恥ずかしい。  だが……。 『挿れるよ』 『ちょ、ちょっと。やっぱり、やめましょ……、ね?』  こんなやり取りが、あったような、無かったような。  頬を赤く染め、倫は怜士に答えた。 「いえ、大丈夫です。気にしてません」  結果、信じられないほどの快楽を得たのだ。  怒ってなどいない、と倫はうなずいた。

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