54 / 179
第十一章 不仲な兄弟
怜士と倫の前に、突然その姿を現した丈士。
(この人が……。怜士さまの弟!)
そして、僕をスパイとして、怜士さまの元へ送り込んだ男!
すぐに和生が丈士の席をテーブルにセッティングし、お茶の時間が再開された。
しかし、倫はティータイムどころではない。
緊張したまま、丈士を観察した。
中肉中背の、標準的な成人男子体形。
顔立ちは可もなく不可もなく、まあ十人並みの、イケメン。
黒髪は、シャープな質感のアップバングだ。
父親の傍で秘書として働いているのだから、大人ショートにまとめてある。
ただ……。
「丈士」
「は、はい!」
緊張しているのは、倫だけではなかった。
丈士もまた、北白川家の嫡男・怜士の隣で心身をこわばらせていた。
「その服装は?」
「ほ、本日は。休暇ですので!」
その返事に、怜士は小さく笑った。
「君の私服は、変わっているな」
「そ、それは、その……」
丈士は、上下とも大げさな迷彩服で身を固めていたのだ。
ともだちにシェアしよう!

