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第十一章 不仲な兄弟

 怜士と倫の前に、突然その姿を現した丈士。 (この人が……。怜士さまの弟!)  そして、僕をスパイとして、怜士さまの元へ送り込んだ男!  すぐに和生が丈士の席をテーブルにセッティングし、お茶の時間が再開された。  しかし、倫はティータイムどころではない。  緊張したまま、丈士を観察した。  中肉中背の、標準的な成人男子体形。  顔立ちは可もなく不可もなく、まあ十人並みの、イケメン。  黒髪は、シャープな質感のアップバングだ。  父親の傍で秘書として働いているのだから、大人ショートにまとめてある。  ただ……。 「丈士」 「は、はい!」  緊張しているのは、倫だけではなかった。  丈士もまた、北白川家の嫡男・怜士の隣で心身をこわばらせていた。 「その服装は?」 「ほ、本日は。休暇ですので!」  その返事に、怜士は小さく笑った。 「君の私服は、変わっているな」 「そ、それは、その……」  丈士は、上下とも大げさな迷彩服で身を固めていたのだ。

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