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『でも。ちょっと、話があって』  そんな気軽さで始まった和生の語りだが、内容が内容だけに、倫はランチのパスタにむせた。 「実は、怜士さまが。今夜も倫くんに、寝室へ来て欲しいとおっしゃってるんだ」 「え!?」  ちょっと、どころではない話だ。 「こ、今夜も!?」 「うん……」  連日のことなので、和生も少し困り顔だ。 「私も、たしなめようとはしたんだよ。でも怜士さまが、どうしても、って」  大丈夫? というように、和生が顔をかしげている。  倫は、考えた。 (ほとんど徹夜で、お店の棚卸したこともあるから、多分いける!) 「僕は平気です。行きます。怜士さまのところへ!」  力強い倫の返事に、和生はホッとした表情だ。  それを見て、倫は気づいた。 (そうか。僕がここでイヤだ、って言ったら。和生さんが、怜士さまに叱られるんだ)  初対面の時から、何かと優しく世話を焼いてくれる、和生。  そんな彼を、困らせるようなこともしたくなかった。  しきりに倫の体調を心配する和生に、倫は笑顔を向けた。 「僕、元気なだけが取り柄ですから!」  あれこれとぼやく和生だったが、やがては空になったトレイを持って、倫の部屋から出ていった。

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