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『ふ、ふん。そんなわけが、なかろう。あの、怜士お兄様だぞ?』 「丈士さまは、怜士さまを誤解なさっています」 『つまらん話で、連絡するな。デザートが、溶けてしまったぞ!』 「丈士さま!」  通話は、途絶えてしまった。 「丈士さまったら。ツンデレなのかな?」  だが倫は、手ごたえを感じていた。 『怜士お兄様が、そんなことを……』  この丈士の声には、驚きと、戸惑いと。 「そして。ちょっぴり喜びが混じっていた! ような気がする!」  相変わらず予想の範疇を超えない考えだが、倫は嬉しかった。  丈士のスパイであることが知れると厄介なので、このことは怜士には言えない。  それでも、彼が兄を本当は慕っているのだ、という事実は何とか伝えたい。 「どうすれば、いいかなぁ。何か、名案はないかなぁ」  再び考え込んでしまった倫だが、それは嬉しい前向きな悩みだった。  

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