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「……あぁ、すまない。眠ってしまったんだな」
「いえ! 謝るのは、こっちです!」
すみませんすみません、と何度も頭を下げる倫に、怜士は微笑んだ。
「大丈夫。痛くも何ともない」
それに、久々に熟睡できたようだ、と彼は言う。
「熟睡? でも、ほんの10分程度でしたよ?」
「倫。君には私を潤してくれる、癒してくれる何かがあるようだ」
出会ってから、まだ二日目なのに、妙に心惹かれる。
そんな怜士の言葉に、耳まで真っ赤になりながらも、倫は彼にちゃんとベッドへ行くよう勧めた。
「睡眠はきちんと取らないと、明日に響きますから」
「解った。倫の言う通りにしよう」
怖い怖いと、怜士はおどけて肩をすくめた。
「君も、自室へ戻りなさい。車に送らせよう」
「ありがとうございます」
「明日の10時も、一緒にお茶を飲んでくれるか?」
「喜んで」
「嬉しいよ。ありがとう」
そんな怜士の笑顔はとても優しく素敵で、倫はすっかり参ってしまった。
『気難しくて、厳しい方だけど。その心根はお優しいと、私は思っているよ』
以前に聞いた、和生の言葉だ。
(うん。とても優しい人だよ、怜士さまは)
そして、その優しさの方が、彼本来の姿なのだろう。
穏やかなひとときを終え、倫は車に乗り込んだ。
シートで揺られながら、怜士の笑顔を想った。
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