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 しばらく怜士の寝室で休ませてもらってから、倫は自室へ帰った。  すると、テーブルの上に置いていた丈士専用の端末に、ランプが点いている。 「丈士さまから先に、連絡があったんだな」  急いで折り返すと、彼はすぐに応答した。 「丈士さま。連絡に出られなくて、すみません」 『いや、まあ。大した用ではない』  てっきり、夜には早く報告しろ、と怒鳴られると思っていた倫は、驚いた。 「丈士さまから僕へ、御用があられたんですか?」 『うん、まあ。その、今日は……ありがとう』 「え!? あ、お茶会のこと、ですか?」 『ん……。久々に、お兄様と過ごせて楽しかった』  良かった、と倫は胸を熱くした。  不仲だった兄弟が、愛情を取り戻し始めたのだ。  その手伝いができたことに、感謝した。 『ところで。君の方から、それとなくお兄様に伝えて欲しいことがあるんだが』 「はい。何でしょうか」 『実は。明後日に、彩華お姉様が姉弟そろってディナーを楽しみたい、と提案された』 「えっ? あの、もう、ご実家に戻られたんですか!?」 『有言実行、しかも迅速。そういう人なんだ、お姉様は』  詳しいことが決まったら、また後ほど連絡する。  そう言い残して、丈士の通話は終わった。 「怜士さんの、お姉さんかぁ。どんな方なんだろう?」  彼女の存在を、本で知ってはいない。  期待と不安が入り混じった気持ちで、倫はなかなか寝付けなかった。

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