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第十七章 長女の登場
『実は。明後日に、彩華お姉様が姉弟そろってディナーを楽しみたい、と提案された』
こんな丈士の報告通り、二日後には怜士邸に彩華が訪ねて来る運びとなった。
「てっきり、お父様の屋敷で、と思っていたが。まさか、私のところをご希望されるとは」
「姉弟そろって、ということでしたから。きっと、お子様方三人での会食を、望んでおいでなんでしょう」
すでに、広いダイニングテーブルに着席している、怜士と倫だ。
しかし会話をしながらも、倫は落ち着かなかった。
「どうした? いつもの君らしくないな」
「いえ、あの……。僕も同席しても、いいのですか?」
怜士の身内でもなければ、格も違う。
場違いなのでは、と倫は困惑していた。
そんな倫を、怜士は優しく励ました。
「倫は、私の大切な人だ。お姉様にも、ぜひ紹介したい」
「怜士さま」
「だから、胸を張って堂々としていればいいんだよ」
「ありがとうございます」
心強い言葉に、倫はスーツの裾を少し握った。
怜士が、この日のために急いで用意してくれた、新しい服だ。
着心地のいい、しなやかな生地の、明るいグレー。
少しトレンドが入った細身のデザインは、倫を華やかに彩っている。
(少しは、大人っぽく見えるかな?)
ドキドキしながら、倫は彩華を待っていた。
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