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「彩華さまの、お越しです」  使用人がそう告げた後に、両開きの大きなドアが開かれた。  ダイニングへと歩んできた姉の姿に、丈士は椅子が後ろに倒れるほど勢いよく立ち上がった。  怜士と倫も、その場に立ち、彩華に敬意を払った。 「お待たせして、ごめんなさい」  よく通る、アルトの声。  滑舌はハッキリしており、それだけで利発な印象を受ける。  公爵家の、娘なのだ。  いわゆる、お姫様。  倫は、彼女が豪奢なドレスを着て登場するものだとばかり考えていたが、違った。  スカートに見えたが、それはミモレ丈の、クロップドシルエットのワイドパンツ。  ベーシックカラーのダークブラウンなので、女性らしい柔らかさと、フォーマル感が両立できている。  さらに、アイボリーホワイトのレースブラウスに、淡い藤色のノーカラージャケットで、華やかさが漂う。  首元に飾られたパールネックレスは、この上品なスマートカジュアルの総仕上げを演出していた。 「素敵な人ですね……」  倫は思わず、小声でそう言っていた。  どこか怜士に似た、はっきりした目鼻立ち。  緩すぎず、固すぎず、アップされた黒髪。  美しさの中にも、凛とした意志の強さがうかがえる。  知性が、匂う。  そんな彩華が、怜士でもなく丈士にでもなく、真っ先に視線を寄こしたのは、倫だった。

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