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トリュフ風味の、コンソメスープをいただきながら。
帆立貝柱と柑橘類、フルーツトマトのマリネ・キャヴィア添えを口にしながら。
姉弟は、いろいろなことを話した。
懐かしい、思い出話。
光希の、自慢話。
怜士と倫の、なれそめ。
「じゃあ、怜士さんは相羽さんに、一目で恋に落ちたの?」
「そのようなものです」
ディナーコースが、デザートのタルトタタンまで進んだ頃には、こんな会話も弾んでいた。
食前酒のシャンパーニュ、そしてロマネ・コンティ、食後酒のブランデーの酔いも手伝って、饒舌になっていた。
この輪の中で、酔っていないのは二人だけ。
20歳未満で、ノンアルコールのカクテルを飲んでいた二人だけだ。
(怜士さま、丈士さま。大丈夫かな? ずいぶん出来上がっておいでだけど……)
(お母様、こんなにご機嫌で。何か変なこと、言いださなきゃいいけど……)
倫と、彩華の息子・光希だ。
特に倫は、丈士の方を心配していた。
怜士は酒に強いのか、あれだけ飲んでもほとんど顔に表れていない。
ところが丈士は、姉と兄に併せて飲むうちに、ひどく赤くなっている。
身振り手振りのオーバーなアクション付きで、やけに明るくなっている。
そして、突然に核心を突いて来た。
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