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 酔っている、と言われるとさすがに心配なので、倫は怜士を注意深く見ていた。  体に手を添え、背中を流し。  髪を洗って、バスタブに入る。  だがしかし。 「怜士さま。本当に、酔っておいでなんですか?」 「ああ、少しな」 「その素振りが、見えませんけれど?」 「アルコールには、強い体質なんだ」  全く、と倫は頬を膨らませた。 「だったら、別に僕が一緒にお風呂に入る必要は、なかったんじゃ?」 「いや、重要だよ」  倫と向かい合わせで広いバスタブに浸かっていた怜士は、体を少し泳がせて彼の隣に身を寄せた。 「初めて、明るい場所で倫の素肌を見ることができた」 「も、もう! 困った怜士さまですね!」  笑いながら、怜士は倫を後ろから優しく抱いた。 「すまない。君に、甘えたくなってしまって」  腕の力が、少しだけ強くなる。  倫は、彼に背中を預けたまま、訊ねた。

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