99 / 179

第二十章 丈士の目覚め

 春の光の、爽やかな朝。  モーニングの食卓には、怜士と倫。  そして、彩華と光希。 「……丈士さんは、どうしたの? 彼も、ここに泊ったんでしょう?」 「丈士は、少し体調がすぐれないらしくて。個室で朝食を摂りたい、と」  怜士の応えに、彩華はやれやれと肩をすくめた。 「二日酔い、ね。あまりお酒には強くないのに、無茶して飲むからよ。大丈夫かしら」 「そう、おっしゃらないでやってください。丈士は、お姉様と久々にお会いできて、嬉しかったのです」  あら、と彩華は微笑んだ。 「怜士さん、丈士を庇うだなんて。ずいぶん、柔らかくなったのね」  それは確かにそうだ、と怜士は考えた。 (倫の、おかげだ)  彼が現れたことで、弟との距離がぐっと縮まった。  共にお茶を飲み、仲が良かった幼い日々を、しっかりと思い出せたのだ。  そしてそれは、ベッドに横になって唸っている丈士も、感じていた。 「うぅ、頭が痛い。ガンガンする」  せっかく、昨晩は姉兄たちと、楽しいディナーを過ごしたというのに! 「この脆弱な体が、呪わしい!」  大きな声を上げると、またひどい頭痛が丈士をさいなむ。 「モーニングも、ご一緒したかったな……」  そして、姉とその子に対する非礼を、お詫びしたかった。

ともだちにシェアしよう!