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「きっと、丈士さまの想いは、櫻子さまに届きますよ」
「ありがとう」
倫の励ましに、丈士はにっこりと笑った。
「君も。これからは、真っ直ぐに怜士お兄様との愛を、育んで欲しい。もう、私のスパイなんかではなく」
「いいんですか?」
「うん。妙な役割を与えて、辛い思いをさせたな。心より、お詫びするよ」
「でも僕は、そのおかげで、怜士さまに会えたんです」
ありがとうございます、と倫も笑顔になった。
すっかり心身の落ち着きを取り戻した丈士は、ベッドサイドの朝食を摂りながら、倫にいろいろな話をした。
今後は父の傍で秘書として働きながら、北白川家の役に立てるよう努力すること。
倫の生家である相羽家の再興に、手を尽くすこと。
婚約者・櫻子と、誠意をもって交際していくこと。
丈士の、明るい未来への意気込みに、倫は一つひとつ頷きながらエールを送った。
「だが、すぐに実行しなければならないことは、お姉様と光希くんへの謝罪だな」
少々ハイテンションにはなっているが、丈士は昨晩の失言を忘れてはいなかった。
そんな彼の出鼻をくじくようで申し訳ないが、倫は彩華の予定を教えた
「ですが、彩華さまと怜士さまは、これからお二人で重要な話し合いがあられるそうですよ?」
少なくとも、午前中いっぱい。
長ければ、丸一日はかかる、と怜士が倫に伝えていたのだ。
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