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 抱き合い、温かな時間を分かち合った後、二人は短い可愛いキスをした。 「丈士が頑張るのなら、私もしっかりしなくては」 「怜士さま。今から、彩華さまとのお話合いですね?」 「うん。きっと政治がらみの話題も出るだろうから、少し長くなるだろう」  その間、倫は光希と共に過ごすことになっている。 「光希くん、どんな遊びが好きなんでしょうか。やっぱり今時の子だから、動画を観る、とか?」 「いや、無理に彼に併せる必要はない。倫が好きなことを、光希くんに紹介してあげてくれ」 「僕が好きなことを、ですか?」 「ああ。世の中や人間の多様性に触れるのも、まだ幼い彼には大切だ」  さて、と怜士は名残惜しそうに倫から離れた。 「ちょっと厄介だが、行ってくる」 「いってらっしゃい」 「お姉様との話が終わったら、次は倫と話がしたいな」 「僕、待ってますよ」 「おかえりなさい、と言ってくれるかい?」 「もちろんです!」  うん、と笑顔を寄こし、怜士は最後にこう言った。 「その時には、君の御両親に会いに行く日取りを話し合おう」  ドアが閉まり、倫は怜士の予告と共に部屋に残った。 「僕の……お父さんと、お母さん」  亡くなったはずの、両親。 「この世界で、再会できるのかな……?」  ふいに投じられた、疑問。  期待より、不安が勝る気持ちで、倫の心は少し震えた。

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