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第二十二章 倫と光希と怜士と彩華と
この世界で、亡くなった両親と再会できるかもしれない……?
倫がその期待と不安に心を震わせていると、ドアがノックされた。
「開けても、よろしいですか?」
「あ……。ど、どうぞ」
「失礼します」
室内に入って来たのは、彩華の息子・光希。
そして、彼のお付きの者たちだった。
小さな5歳の光希の周りを、数名の大人が固めている。
教育係に、マナー講師。
ボディガードに、医師に、執事。
しかし、真っ先に倫に声を掛けたのは、光希だった。
「相羽さん。本日は、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
少し緊張した表情を残したまま、笑顔を交わした二人だ。
倫は、まず光希にこう提案した。
「良かったら。僕のことは、倫と呼んでくれて構わないですよ?」
「では倫さんは、僕を、光希と呼んでください」
「はい。光希くん」
それには、周囲の大人たちが口々に反発した。
「光希くん、などと! 光希さま、とお呼びいただきたい!」
「相羽さんとは、家柄が違うのですよ!?」
「身の程をわきまえていただかないと、困ります!」
あまりの剣幕に、倫がたじろぐと、光希が腕を上げてそれらを制した。
「静かに。僕は今日、倫さんにお世話になるんだ。彼に、従いなさい」
その毅然とした態度に、倫は心の中で深い息を吐いた。
(さすが、彩華さまのお子さんだな)
5歳児でありながら、光希はすでに、上に立つ者の持つオーラを身にまとっている。
こんな立派な子に、ついていけるかな、などと考えながら、倫は改めて彼と向き合った。
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