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「僕のお母様とお父様は、家同士のためになるから結婚したんだ、って。お母様は初めっから、お父様を愛してはいなかったんだ、って」  そう語る光希の目は、暗い。  そして、父もまた、母とは別に数名の情人を囲っていたという。 「お父様が家族を大切にしないから、離婚することに決めた、とお母様は僕に話したんだ」 「そうだったのか……」  互いに歩み寄る努力をしないまま、夫婦関係は冷めきって破局を迎えた。  光希に、罪はないのに。  彼の心は全く考慮されないままに、大人の事情だけで決められた離婚だったのだ。 「光希くん。辛かったね……」  かける言葉が見当たらなく、倫はただシンプルに、彼を労わった。  すると、光希は一粒だけ、涙をこぼした。  すぐに頬を伝った涙をぬぐい、彼は上を向いた。 「ごめんなさい。あ、そうだ。倫さんの、お母様とお父様は、どんな人?」  無理に明るく振舞い、話題を逸らそうとする光希が、痛ましい。  だが倫も、そんな彼に併せるように、軽やかな声を出した。 「お父さんもお母さんも、働き者だったよ」  そして倫自身も、小さい頃から両親の仕事をよく手伝っていたことを話した。 「すごいなぁ。僕くらいの頃から、お仕事を手伝っていたなんて」 「簡単な作業だけどね。おまけのお菓子を入れる袋を、作ったり」 「何だか、楽しそう!」 「今の仕事も、楽しいよ。ハーブガーデンに、行ってみる?」 「うん! 行きたい!」  話すうちに、二人はすっかり打ち解け合った。  笑顔で手を繋いで、ガーデンへと向かった。

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