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彩華もカップに口をつけ、喉を潤してから話し始めた。
「わたくし、怜士さんのお屋敷に来てすぐに、情報収集をしたの」
「いつの間に……」
「嫌だわ。わたくしの性分は、充分に解っているでしょう?」
そうだった。
この姉は、昔から優れた戦略家だ。
自分が今現在置かれた状況をシビアに受け止め、その上で周囲を良く観察する。
そして、無理なく無駄なく動き振舞い、できうる範囲で最高のスッキリした環境を整えるのだ。
合理的かつ快適に、生きる。
(やはり彩華お姉様は、私より優秀でいらっしゃる)
弟・丈士との関係がこじれ、領内の諸策に追われ、隣国の挑発に疲弊する。
その挙句、どこか厭世的(えんせいてき)な気分に陥っていた自分を、怜士は省みていた。
(だからお姉様は、私に隙ありと見て、政権交代を迫って来られたのだ)
それは、少なからずショックだった。
しかし彩華は、怜士の考えとは違う切り口から、語ってきた。
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