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「解ったのは、あなたがこの数日でみるみる朗らかになった、ということなの」 「朗らか、に。ですか」 「そう。屋敷内の主だった人間が、みんな口を揃えてそう言ったわ」 「数日で……」  そこで怜士は、思い当たった。  倫だ。 (倫に出会い、彼と触れ合ううちに、私は生気を取り戻したんだ)  怜士の表情に、彩華はうなずいた。 「その様子だと、気づいたようね。そう。あなたは、相羽さんに救われたのよ」 「そのようですね。いや、そうです」  私は、倫に救われた。  それはそうと、と怜士は彩華に問いかけた。 「情報収集、とおっしゃいましたが。その他には? 私の抱える諸問題についても?」 「何かしら。それ」 「えっ? いや、色々とあるでしょう。領内諸策やら、隣国の挑発やら」 「言われてみれば、そうね。ついでに、聞いておけば良かったわ」 「ついでに、って。そんな」  わたくしはね、と彩華は身を乗り出した。 「不満や不安は山ほどあるけど、このお屋敷に入ってまず気になることと言えば、怜士さんなの。あなた、わたくしの弟なのよ?」  実の弟が元気かどうかが、最優先! 「怜士さんが丈士さんを心配していたように、わたくしもあなたが心配なの」  そして怜士は、彩華に額をつつかれた。 「ふふっ。久しぶりだな、お姉様に額を弾かれるのは」 「でしょう?」  笑顔の弟に、姉も明るく笑いかけた。  重苦しかった書斎に、笑い声がようやく生まれた。

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