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 大人たちが融和したころ、倫と光希はハーブガーデンの中に、しゃがんでいた。 「これは……アブラムシ? 図鑑で知っていたけど、本物は初めて見るよ!」 「うん。このままだとハーブを枯らしちゃうから、駆除しないといけないんだ」 「殺しちゃう、ってこと?」 「そう。可哀想だけどね」  倫は、牛乳の入ったスプレーを手にした。  それから、ハーブの若芽に群れ付いているアブラムシに、吹きかける。  興味津々で覗き込んでいた光希だったが、しばらく後に倫を見上げた。 「死なないよ?」 「もう少ししたら牛乳が乾いて、その縮む力でアブラムシは押しつぶされるんだ」  そして、窒息死する。  倫の説明に、光希は眉根を寄せた。 「やっぱり、可哀想だね」 「そうだよね。人間の都合で、殺されちゃうなんて」  湿ってしまった空気を払うように、倫は勢いよく立ち上がった。 「そろそろ、10時だよ。ティータイムにしよう」 「うん! 怜士おじさま、来てくれるかなぁ?」 「それは、行ってみないと解らないね」  光希も立ち上がり、二人はいつもお茶をいただくテラスへと向かった。

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