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第二十五章 お互いの告白

『明日、君の御両親に会いに行こう』  こんな怜士の提案に、倫は動揺した。   急に、明日と言われても! (それに、僕。実家の場所も知らない!)  ここは、以前読んだ小説の世界だ。  馴染みの土地もなければ、見知った人々もいない。  しかも倫自身が『相羽男爵』の子息、ということになっている。 (お父さんは、男爵って柄じゃなかったし……)  どきどきと、心臓を激しく打たせる倫に気づかないまま、怜士は自らの進退と未来像について話し始めた。 「私は侯爵の爵位を返上し、政界から退きたいと考えているんだ」  怜士は、それが姉・彩華の勧めであることも、明かした。 「私の後任には、お姉様が就く。そして、ゆくゆくは息子の光希くんに継がせる」  確認するように、小さくうなずきながら聞いていた倫だったが、素直な疑問を投げかけた。 「怜士さまは、その後どうなさるんですか?」 「うん……」  怜士は倫の髪に、再び手をやった。  ひとつ撫で、そして決意したように告げた。 「実は、旅に出たいと思っている」 「旅に、ですか」  突飛な怜士の答えだったが、倫はすんなりと受け入れることができた。

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