126 / 179
3
もともと、異文化に興味関心があった、と怜士は語る。
「海外に赴き、文化や習慣の違いや、考え方や価値観の違いを理解したかったんだ」
「それは、大切なことですね」
「うん。外交を行うのなら、その上で、と思っていた」
だが実際は、父親の命ずるままに国境を守る侯爵となってしまった。
「彩華お姉様は、海外を飛び周り、見聞を深めるという私の夢を、覚えてらしたんだよ」
「じゃあ、怜士さまは子どもの頃から旅人になりたいと?」
「そうなんだ。自分でも、忘れかけていた」
その夢の扉を、倫がノックし、彩華が開けた。
『留守はわたくしと丈士さんに任せて、怜士さんは相羽さんと一緒に自由になりなさい!』
固く凍り付いた怜士の心を倫が溶かし、彩華はその夢に翼を与えたのだ。
みんなで楽しくお茶会をした後に、姉はそのような計らいを弟に提案していた。
疲れ果て、心をすり減らしている怜士の前に、愛する倫が現れた。
弟を救えるのは、彼しかいない。
そう判断しての、彩華の思いだった。
ともだちにシェアしよう!

