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僕は、父と母を相次いで亡くしたばかりの、高校三年生だったんです。
母の納骨を終えて、墓石の前で悲しみに暮れていました。
瞼を閉じ、冬の冷たい雨の中に震えていました……。
「ですが、目を開くと周囲の状況が変わっていたんです」
冷たい雨は、温かな春風になっていました。
初めて出会った虎太郎さんは、名字を持つ僕を貴族の御曹司と言いました。
それから僕は、和生さんに連れられて、怜士さまとお会いしました……。
「北白川 怜士さま。それは、僕が大好きだった本の登場人物だったんです」
「本、の?」
「僕は、本の世界に迷い込んだ異邦人なんです」
倫の告白を、怜士は静かに聞いてくれた。
驚きをあらわにしたり、笑い飛ばしたりすることも、なかった。
ただ、うなずき。
そして、倫に両手を差し伸べた。
「どうにも不思議な話で、すぐには気持ちの整理がつかない」
だが。
「だが、今私の目の前にいる少年が、大切な存在であることに、変わりはないよ」
「怜士さま……!」
「そんな思いを胸の内に抱えて、今まで苦しかっただろう。大丈夫、私は倫を愛している」
「怜士さま……怜士さまぁ!」
胸にすがって涙をこぼす倫を、怜士は優しく受け止めた。
その涙が止まるまで、静かに髪を撫で続けた。
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