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第二十六章 再会

『僕は、本の世界に迷い込んだ異邦人なんです』  そう告白した、明くる日の午後。  倫は、高級車の後部座席で緊張していた。  隣には、怜士がいてくれる。  寄り添い、手を取り、微笑みかけてくれる。  それでも倫は、落ち着かなかった。 (僕のお父さんとお母さんは、亡くなったんだ)  だのに、この世界では生きている。  存在し、再び会えるという。 (どんな人なんだろう。全く知らない人だったら、どんな風に振舞えばいいんだろう)  そんな倫に、怜士が話しかけてきた。 「私の緊張が、倫にもうつってしまったのかな?」 「えっ」 「少し、表情が固いと思って」 「あ、はい。怜士さまも、緊張されてるんですか?」  それはそうだ、と怜士は少し肩をすくめた。 「君の御両親に、結婚の御承諾をいただきに上がるんだ。緊張しているよ」 「でも。本当に、急すぎませんか?」  それは、と怜士は倫への思いやりを打ち明けた。 「昨日のお茶会で、君が寂しそうに見えたものだから」  家を離れ、家族と別れ、悲しい思いをしているに違いない。  そう考えての、怜士の迅速な行動だった。

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