129 / 179
第二十六章 再会
『僕は、本の世界に迷い込んだ異邦人なんです』
そう告白した、明くる日の午後。
倫は、高級車の後部座席で緊張していた。
隣には、怜士がいてくれる。
寄り添い、手を取り、微笑みかけてくれる。
それでも倫は、落ち着かなかった。
(僕のお父さんとお母さんは、亡くなったんだ)
だのに、この世界では生きている。
存在し、再び会えるという。
(どんな人なんだろう。全く知らない人だったら、どんな風に振舞えばいいんだろう)
そんな倫に、怜士が話しかけてきた。
「私の緊張が、倫にもうつってしまったのかな?」
「えっ」
「少し、表情が固いと思って」
「あ、はい。怜士さまも、緊張されてるんですか?」
それはそうだ、と怜士は少し肩をすくめた。
「君の御両親に、結婚の御承諾をいただきに上がるんだ。緊張しているよ」
「でも。本当に、急すぎませんか?」
それは、と怜士は倫への思いやりを打ち明けた。
「昨日のお茶会で、君が寂しそうに見えたものだから」
家を離れ、家族と別れ、悲しい思いをしているに違いない。
そう考えての、怜士の迅速な行動だった。
ともだちにシェアしよう!

