131 / 179

3

 決して豪邸ではないが、それなりに立派な家。  庭は広く、緑の生垣に囲まれ、木調のアルミ素材でできた和モダンな門柱。  その前に、倫は懐かしい顔ぶれを見た。  両親だ。  倫が帰ってくると聞き、待てないで外まで出迎えに出ているのだ。 「お父さん……お母さん……!」  見る間に、視界がにじむ。  すでに故人で、もう二度と会えないと思っていた、家族。  彼らは倫の世界のままの姿で、彼の前に現れた。 「倫。大丈夫か?」 「は、はい。ごめんなさい」  涙をこぼす倫に、怜士は先ほどの考えを改めずにはいられなかった。 『もしかすると、身の上の急変に心が追い付かず、脳に異常をきたしているのかもしれない』 『苦しみや悲しさから心を守るために、妄想が生み出されているのかも』  倫が、別世界の人間だとは100%信じ切れていなかった、怜士だ。  しかし、彼の涙に確信を持った。 (倫は、本当にどこか他所からやってきた、異邦人なんだ)  不思議なことだが、信じずにはいられない事実だった。

ともだちにシェアしよう!