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『僕は、父と母を相次いで亡くしたばかりの、高校三年生だったんです』 『母の納骨を終えて、墓石の前で悲しみに暮れていました』 『瞼を閉じ、冬の冷たい雨の中に震えていました……』  (私の屋敷へ来てから、わずか一週間程度。だのに、ここまで感極まって泣くだろうか?)  いや、違う。  倫は本当に、今まさに、亡くなった両親と再会しているんだ。  怜士は心にしっかりとそれを刻み、その上で倫の肩に手を置いた。 「さあ、行こう。お父様とお母様が、待っていらっしゃるよ」 「はい……」 「涙を拭いて。お二方が、心配なさるといけない」 「はい……」  怜士に支えられながら、倫はゆっくりと門へ歩んだ。  すぐに両親が、数歩前へ出て、我が子を迎え入れた。 「倫。よく帰って来たな」 「元気にしてた? ご飯は、ちゃんと食べてた?」 「お父さん、お母さん。……ただいま」  両親は、うんうんとうなずき、倫の隣の怜士に頭を下げた。 「北白川さん、倫がお世話になりまして」 「ご迷惑を、お掛けしませんでしたか?」  それには、笑顔で。  そして、こちらも頭を下げた怜士だ。 「私の方こそ、倫くんには助けていただきました」  そこへ、玄関のドアが開き、一人の青年が顔を出した。 「お父さん、お母さん。立ち話もなんだから、上がっていただいて」 「そうか。そうだな」  その青年に、倫は驚いた。 (だ、誰!? お父さん、お母さん、って?)  僕は、一人っ子のはずなのに!?  しかし、両親は当然のように彼と接している。  疑問を抱いたまま、倫は元の世界よりかなり豪華な我が家へと上がった。

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