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「僕は、北白川さんに好感を持ったなぁ」  お茶菓子のカステラを頬張りながら、倫の兄は明るい声を上げた。  お行儀が悪い、とたしなめる母の手のひらを避け、言った。 「正直、今回の件は全部、弟の丈士さんがやったことじゃないか。だのに、人のせいにしたり言い訳したりしないで、自分がきちんと頭を下げる。さすがだなぁ、って思ったよ」  それもそうだ、と両親は顔を見合わせて、うなずいている。  そして怜士は、今が良いタイミングだと、そんな二人に訴えた。 「わたくしは、今後いくらでも頭を下げ、罪を償うつもりです。ですが、倫くんを愛する気持ちだけは、抑えられません」  どうか。 (私の思いが、伝わりますように!) 「どうか、倫くんとの結婚を、お許しください」  熱を帯びた怜士の声は、倫の耳にも、心にも響いた。 「ありがとうございます、怜士さま」  こうもハッキリと両親に告げられれば、倫も応えずにはいられなかった。 「お父さん、お母さん。そして、お兄さん。僕も、怜士さまを愛しています。結婚を、認めてください」 (お願いします!)  怜士と倫、二人そろって頭を下げた。

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