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「倫、立派になったな。ちゃんと、自分の意見を言えるようになった」 「さっきも伝えたけれど、倫さえ良いのなら二人の結婚に賛成よ」  温かな両親の返事に、怜士と倫の表情は明るくなった。  今度は、この二人が顔を見合わせて、うなずいた。  しかし、そこに少し不安そうな声が割って入った。  カステラを食べ終えた、兄だ。 「大丈夫? 身分が、違い過ぎないかなぁ」  せめて父が、まだ男爵だったら、何とか格好がつくかもしれないが。 「世間様が、納得するかな。北白川公爵の嫡男・怜士侯爵さま、だよ? 倫、社交界でいじめられたりしない?」  その心配はない、と怜士は説明した。 「わたくしは近々、爵位を返上し、政界から退くつもりです」  これには、倫の家族は驚いた。 「そんな重要なことを、このような場で喋ってしまっていいのですか!?」 「わたくしのパートナーとなる、倫くんのご家族です。最も信頼のおける方々と、思っています」  揺るぎない怜士の覚悟と清々しさに、両親と兄は確信した。 「北白川さん。あなたなら、倫を幸せにしてくれますな!」 「二人の結婚を、認めましょう」 「良かったね、倫」  家族全員に祝福され、倫の涙腺はついに崩壊した。 「お父さん、お母さん……! お兄さん……!」  ぽろぽろと大粒の涙をこぼす倫を、怜士が優しくなだめてくれる。  失ったはずの家族と、新しい家族に囲まれて、倫はしばらく泣いていた。

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