137 / 179
4
「倫、立派になったな。ちゃんと、自分の意見を言えるようになった」
「さっきも伝えたけれど、倫さえ良いのなら二人の結婚に賛成よ」
温かな両親の返事に、怜士と倫の表情は明るくなった。
今度は、この二人が顔を見合わせて、うなずいた。
しかし、そこに少し不安そうな声が割って入った。
カステラを食べ終えた、兄だ。
「大丈夫? 身分が、違い過ぎないかなぁ」
せめて父が、まだ男爵だったら、何とか格好がつくかもしれないが。
「世間様が、納得するかな。北白川公爵の嫡男・怜士侯爵さま、だよ? 倫、社交界でいじめられたりしない?」
その心配はない、と怜士は説明した。
「わたくしは近々、爵位を返上し、政界から退くつもりです」
これには、倫の家族は驚いた。
「そんな重要なことを、このような場で喋ってしまっていいのですか!?」
「わたくしのパートナーとなる、倫くんのご家族です。最も信頼のおける方々と、思っています」
揺るぎない怜士の覚悟と清々しさに、両親と兄は確信した。
「北白川さん。あなたなら、倫を幸せにしてくれますな!」
「二人の結婚を、認めましょう」
「良かったね、倫」
家族全員に祝福され、倫の涙腺はついに崩壊した。
「お父さん、お母さん……! お兄さん……!」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼす倫を、怜士が優しくなだめてくれる。
失ったはずの家族と、新しい家族に囲まれて、倫はしばらく泣いていた。
ともだちにシェアしよう!

