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 怜士との婚約を、和生は驚き、そして喜んでくれた。 「良かったね。おめでとう、倫くん!」 「ありがとうございます!」  和生は、まだ記憶に新しい倫との会話を、思い出していた。 『怜士さまはこれまで何人も、美しい人間をお傍に置き愛でられたんだ。でも、成婚に至るまでには、関係は深まらなかった。倫くんなら、その壁を突破できるかもしれない!』 『僕はまだ、結婚したくはありませんよぅ!』  あの頃の怜士さまは、ご自分の殻に閉じこもっておいでで。  そして本当に、倫くんはその壁を乗り越えてくれたんだ。 (その倫くんは、まだ結婚したくはない、なんて言ってたけど!)  舌の根も乾かないうちの、婚約だ。  愉快だが、微笑ましい。 「倫くん」 「はい」 「怜士さまを、よろしく頼むね」 「どちらかと言えば、僕の方が頼りないんですけど」  それには、ゆっくりと首を横に振る和生だ。 「君が傍にいてくれれば、怜士さまは心安らかに、お過ごしになれるんだよ」 「……はい!」  そう。  僕は和生さんが言うように、ずっと怜士さんの隣にいよう。  倫の胸に、確かな誓いが生まれた。

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