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「今。怜士さんが、鳥になったらいいな、って思いました」
「……鳥?」
「あ! やっぱり、笑った!」
「いやいや、笑ってない!」
続きを聞かせて、と怜士は倫の肩を抱いた。
「……鳥になった怜士さんの背中に乗って、ここから海へ向かって飛んでみたいな、って」
「それは、いいな……」
肩を寄せ合い、二人は静かな時間に浸った。
聞こえるのは、鳥の声。
木の葉のささやき。
やがてはそれらすら聞こえなくなり、ただ互いを感じ合った。
胸の鼓動、密やかな呼吸。
体温は、気脈をめぐる血の流れを伝えてくる。
ああ。
生きている。
僕は。
私は。
かけがえのない人と共に、この世に生を受けている。
気付けば、抱き合っていた。
その尊い時間を、分け合っていた。
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