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 楽しい時は、あっという間に過ぎ去るものだ。  あと一泊したいな、などとプチ我がままを言う倫をなだめて、怜士はEⅤを発進させた。 「今度は、もう少し余裕を持って、来たいですね」 「うん。一泊では、物足りないな」  焚火をしたり、沢登りをしたり。  望遠鏡を持って行って、星空を眺めたり。 「ああ、楽しみだなぁ!」 「倫、そろそろ海沿いの道路に入るぞ」 「えっ!? ……うわぁ、すごい!」  ガードレールの下は、すぐ海。  間近に見える美しい輝きに、倫は歓声を上げた。 「海、すごく綺麗ですよ!」 「どれ。私も見よう」  ひょい、とナビシートに乗り出してきた怜士に、倫は慌てた。 「怜士さん! 運転は!?」 「自動運転に切り替えたから、大丈夫」  身を寄せ合い、きらめく海に見入った。 「僕、海にも行きたいな……」 「うん。帰ったら、すぐに予定を立てるよ」  そんな、のどかな会話を楽しんだ。

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