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いや、倫は倫で、盛り上がっているところだった。
「ねえ、怜士さん。ソフトクリーム食べようよ! 美味しそう!」
「いや、その。そういうのは、後からゆっくり……」
「怜士さん、運転で疲れたでしょう? 僕が、ご馳走するね!」
「……ありがとう」
倫は、バニラのソフトクリームを注文した。
そのオーダーに、怜士は深くうなずく。
「さすがだな、倫」
「ぅん? 何が、かなぁ?」
「久しぶりに、初めて出会った頃を思い出したよ」
怜士は、元居た自分の世界での出来事を、回想していた。
『倫』
『は、はい!』
『お茶は、美味しいか?』
『え、あ、はい。すごく、美味しいです』
『どんな風に、美味しい?』
『蜂蜜を、少し加えてあります。ですから、甘みがあって飲みやすいです』
定番の、シンプルなバニラフレーバーだからこそ、ごまかしは一切きかない。
もし何らかの不快な添加物が混ぜてあれば、倫はすぐに見破るだろう。
(そのような品を提供する場となると、うちの取引相手にはできないな)
まるで試すような気持ちで、怜士はスタッフからソフトクリームを受け取った。
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