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「怜士さん、これは!」
「うん、見事だ!」
ソフトクリームを一口なめただけで、二人は目を輝かせて唸っていた。
そんな二人に、カフェのスタッフはどぎまぎしている。
(さっきから、こちらのお客様。何か、普通の人たちと違う……)
二口目をなめ、深く息をついた後に、怜士は、倫は、スタッフに質問を浴びせた。
「このクリームは、どういった牛乳を使っているのか!?」
「さ、搾乳したてのフレッシュな牛乳を、利用しております」
「他の原料は、何ですか!?」
「さ、砂糖のみです。乳化安定剤などは、使用しておりません」
だからかぁ、と二人は三口目をなめて笑顔になった。
濃厚なのに後味さっぱりで、ミルクの味が活きている。
そこへスタッフが、とどめを刺した。
「季節で微妙に変化する、牛乳本来の味わいを実感できるソフトクリームです」
「はぁあ……」
「素晴らしい……」
後はただ、満面の笑みで味わう二人だ。
「幸せですねぇ、怜士さん」
「うん。350円で、こんなに幸せになれるとは」
微笑ましい客に、スタッフの顔もほころんだ。
(幸せなのは、350円のソフトクリームのせいだけではない、と思いますよ)
きっと、お二人で召し上がるから幸せなのです。
そう、声を掛けたいところだった。
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