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第23話 ギャップ※

 ランプの仄かな光で、身体が照らされる。  僕はパジャマの下に、あえてベビードールを着ていた。肩紐は細く、胸下の切り替えからふんわりと広がる薄ピンクのチュール生地は、僕の細い身体を精一杯飾り立てている。  下履きはサテンの小さなもので、座っているとチュールにぎりぎり隠れて見えないけれどこちらも同じピンクだ。  侍女たち渾身の見立ては自分でもエロティックだと思うが、セレスにはどう見えているだろうか。  教えてもらってびっくりしたのは、裸よりもそそる下着というものが世の中にはまだまだ存在するらしい。上流階級の嗜好は奥深い。  僕も着ているだけで、ドキドキ、そわそわ落ち着かなかった。  高級な薄い生地を重ねたベビードールはうっすらと肌が透けている。ツンと立った乳嘴も逆に目立っているかもしれない。そう考えるだけでカッと身体が熱くなる。  僕はお尻の狭間で猛りの熱さを感じながら、セレスの上着を脱がした。  セレスは興奮に目尻を赤く染め、興味津々といった様子で僕の身体に触れる。その手が僕の胸を掠めたとき、ふいうちの刺激に甘い声が漏れた。 「あ、んっ」 「硬くなって尖ってる……ウェスタ、なんて綺麗なんだ……」  両手の指でくりくり、胸の先端を転がされる。敏感なそこはチュールに擦れて痛いくらいなのに、甘い痺れが身体全体に広がっていく。僕はダンスを踊るみたいに、セレスの上でぴくぴくと跳ねた。  されてるばっかりじゃ駄目だ。僕はセレスの下も脱がそうと、手を伸ばした……そのとき。  ――急にセレスは腹筋の力だけで起き上がったかと思うと、一瞬の間に僕は仰向けに寝そべっていた。 「ん? あれ……」 「もう止まれないからな」  天蓋を背景にしたセレスはそういうや否や、僕の乳首に唇を寄せた。 「あぁ! んっ、ん、ん〜〜〜っ」 「はぁっ。どうにかなりそうだ……」  舌の動きと、濡れたチュールの感触。感じたことのない感覚に頭の中が真っ白になる。いまのなに?  セレスは下履き以外をばさばさと脱ぎ捨てながら、一瞬も見逃すまいと言わんばかりに視線を外さず僕を見ていた。唾液に濡れたチュールがペタ、と肌に張り付いている。  そして、仰向けになったことで見えるサテンの下履きからはみ出てしまっているペニスに目を留めた。 「色変わってるの、たまらないな……」 「えっ?」  思わず自分でも確認すると、薄ピンクの下履きは先走りに濡れてそこだけ色が濃くなっている。なんならベビードールも乳首の部分だけ、その色がわかるくらいに透けていた。  こここここれはちょっと……!  あまりもの羞恥に僕はコロンとうつ伏せになって全てを隠した。  まぁ、隠せたと思ったのは僕だけで。  セレスはベビードールを背中から捲り上げ、僕の腰からうなじに向かって舌を這わせた。 「ひゃあっ、ん! 〜〜〜っ」  まって、背中ってこんなに感じるの?  ぞくぞくとした快感が湧き上がり、思わず逃げるように背を反らす。それくらいでセレスから逃げられるはずもなく、起き上がったことでできた隙間に手を差し込まれ、再び乳首を摘まれた。  許容を超えた刺激に、ガクガクと全身が震える。無意識にシーツへ擦り付けていたペニスからじわっと精液が漏れ、シーツが濡れた感触があった。  自分でも理解できない反応に呆然としていると、そのまま腰を持ち上げられる。 「せ、セレス、あっ。まって……」 「待てない。ウェスタが煽ったんだ……責任を取ってくれ」  情欲に濡れた声。その低い声は僕の脳をジンと痺れさせる。  セレスは僕のお尻にかかる小さな生地を押しのけ、会陰から蕾を揉みはじめた。そのうち、いつの間にか用意されていた香油が狭間に垂らされる。 「、くぅん……」 「可愛い。ウェスタのここ、ひくひくしてるな」 「い、言わないでぇ……っ」  そうなのだ。今日こそと思って自分の中を洗浄したときに軽く指でほぐしたから、僕の後孔はすでに更なる刺激を求めている。  それにしても……セレスにとっては事実を告げているだけなんだろうけど、こんな風に実況されると、恥ずかしくてたまらなくなる。  セレスは期待に応えるように、香油で濡らした指をつぷ……と挿入させた。媚肉は歓迎するように、セレスの指を奥へ奥へと誘う。  長い指が自分では届かないところまで入ってきて、切ない疼きをもたらした。  しかも記憶力のいい魔法使い様は、僕を悶えさせる場所をしっかりと覚えている。 「あっ、ゃん! せ、せれすぅ……もう、あぁ……イっちゃ、」 「いくんだ。ウェスタ」  セレスは前まで垂れていた香油を使って、僕のペニスを前後に擦り上げる。そこはさっき中途半端に達したせいで、まだ敏感なまま甘勃ちしていた。  いつの間にか増えた指で容赦なく前立腺を抉られ、その動きに合わせて屹立を扱かれたらひとたまりも無い。  快感が脳内で弾けた。 「〜〜〜!!」  僕はあっけなく達し、シーツに白濁を吐き出した。腔内はきゅんきゅんと指を締め付け、後ろの雄に媚びている。  セレスはぐちゃぐちゃになった下履きを脱がせ、僕を仰向けに転がした。  はぁはぁと荒い呼吸を繰り返していた僕は、セレスの顔を見たら無性に恋しくなって、腕を伸ばしキスを強請る。すかさず覆いかぶさってくるセレスから濃厚なキスを受け取りながら、内心こう考えていた。 (このひと……学習能力高すぎじゃない!?)  この前まで童貞だったのに……  誘った自分が展開についていけないまま、セレスが僕の両脚を抱え上げ、ひた、と後孔に熱杭を宛てがう。セレスの熱を感じて、全神経がそこに集まっている。僕は期待と緊張で目が潤むのを感じた。 「……いいか?」 「んっ。きて……」  止まれないって言ったくせに最後の最後で許可を求めるところが、この人の優しいところだ。  紫の瞳が、興奮に暗く燃えている。セレスと見つめ合いながらゆっくりと押し込まれ、少しの苦しさと共に圧倒的な質量が入ってきた。 「ん、あ、あ、ぁ……」 「く……」  セレスは緩やかな動きで、しかし容赦なく僕の中に道をつけた。熱くて、硬くて……こんなにも大きかったっけ?  僕はなんとか力を抜く。このときばかりは初めてじゃなくてよかったと思った。絶対一度じゃ無理だ。  セレスの下生えが僕のお尻に当たる頃には、長大な一物がお腹に収まっているのが不思議なくらいだった。  はぁ、とお互い同時に熱い息を吐く。浅い呼吸しかできないくらい苦しいのに…… 「しあわせ……」 「……俺もだ」  セックスでこんなにも多幸感を感じたことがあっただろうか? ――いや、あるはずない。だって、初めて実った恋だ。  好きで、大好きで、幸せで……涙が零れそうになるのは苦しいからだということにした。  ひくっと中が蠕動し、セレスの半身が僕の良いところを全部ひっくるめて圧迫していることに改めて気付いた。意識しだすと途端に快感ばかりが襲ってくる。  セレスはまだ動いてもいないのに、勝手に腰が揺れ、声が漏れる。 「ね、せれす……あっ。どうしよ、きもちぃ……んんッ。は、早くうごいて!」  ぐる、とセレスの喉から獣のような唸りが聞こえた気がした。セレスが抜けるぎりぎりまで腰を引くと、腔内のひだが追いすがるように絡みつく。  そのまま間髪入れずズン! と奥まで突かれる。ビリビリくる衝撃と悦楽に押し出されたような高い声が出た。  無意識につま先がピンと伸びる。はっ、これ、やばいかも……  一度つけられた道は従順にセレスの形を覚え、歓待するように絡みつき、甘く締め上げる。  いつの間にかセレスは僕の脚を抱えたまま、上から叩きつけるように抽挿を繰り返している。腰が浮き、折りたたまれたような体勢はかなりつらいはずなのに、気持ちよさで何も考えられない。 「だめ、あぁ! ……また、きちゃぅぅ……あんっ。あ゛~~~!」 「ウェス……!」  今度は触れることなく達した陰茎から、薄くなった精液が自分の顔にまで飛んできてクラクラする。  奥にセレスの熱い飛沫が叩きつけられて目の前が真っ白に染まった。真上からドクドクと注がれる子種がこれ以上ないくらい奥まで入ってくるのを感じて、思ってもみない言葉が自分の口から零れた。 「あっ、そんな奥に出したら……赤ちゃん、できちゃうぅ……」 「……!」  ハッと気づいた時にはもう遅かった。  閉じていた目を開けばパチッと目が合う。セレスの顔が真っ赤になっているのに気付いて、僕はそれを上回るくらい首まで赤くした。 (ねぇ! なんてこと言っちゃったの!? ていうか僕、そんなこと考えてたの!?)  どうしよ……わざとじゃないからこそ、とてつもなく恥ずかしい。思わず両手で顔を覆って顔を横に背けると、耳に息を吹き込むようにこう言われた。 「あとで掻き出すから、もっと出していいか?」  耳をくすぐる息、脳に響く低い声。尋ねられた倒錯的な内容にポカンとしていると、そのまま耳朶を甘噛みされた。 「あ! ひゃぁっ……」 「煽りすぎだ」  セレスは僕の濡れたベビードールを脱がせてやっと生まれたままの姿にすると、挿れたまま僕の片脚だけを抱え上げた。体を交差させるようにもう片脚をセレスが跨ぐと、僕の身体は自然と横向きになる。  いつの間にか硬く復活していた熱杭がごりごりと色んな場所を抉って、不意打ちの刺激に身体が跳ねた。セレスは腰を揺らし、達したばかりでまだ敏感な奥を捏ねるように嬲る。  なに、この……体位? 奥まで簡単に届いて、セレスの脚が僕の力を無くしたペニスやその下の陰嚢、会陰までもをもみくちゃに擦る。  しかもガチガチの欲望で最奥の窄まった場所を攻められると、腰から下が溶けてしまいそうなほど気持ちいい。 「んっ。ぁ〜っ、んぅ……んんっ」 「あぁ……ウェス、すごい」  胎内は自分でも制御できないまま断続的に痙攣し、締めつける度に侵略する雄の逞しさを実感する。僕は怖いほどの快楽と幸福感に、何度も何度も繰り返し達していた。 「やだっ……セレス……あんっ。これ以上、イっちゃ……こわいっ……! おか、おかしくなっちゃぅ……〜〜〜!」 「ぐっ……搾り取られる……!」  二度目にセレスが達するころには、僕はもうイキすぎてくたくただった。  それなのに、僕はセレスから離れるのが嫌で少しの隙間もないほどぎゅうぎゅうにくっつき、甘えてキスをねだり……気付けばふたたびセレスに貫かれて揺らされていた。  その後はウトウトとしながらバスルームへと連れて行かれ、『掻き出す』を有言実行したセレスにまたもや啼かされた。体力が尽きて、途中から何度も意識が飛んだせいで記憶は曖昧だ。  結局指じゃ物足りなくなった僕がセレスにねだったような気もするし、なんだかんだ言いくるめられた気もする。セレスの童貞をいただいたときも三回はしたけど、濃度が桁違いだ。  夜明けを迎えるころにやっとセレスも満足して眠りにつき、僕は二度と煽るまいと決意して泥のように眠った。  でも……すごく幸せ…………  パチリと目が覚めたとき、すでに日は高かった。汗ばむくらいに暑いな、と身じろぎすればセレスに抱きしめられていることに気付く。  一気に昨夜、というか数時間前までのことを思い出しカァッと顔に熱がのぼる。す、すごいことしちゃった……  ここしばらくの悩みは杞憂だったことが分かったけれど、あまりにも激しく濃厚な行為に驚いてしまった。あんなにも普段クールなくせして、すっごい…………!  しかもよく考えたら掻き出すなんてまどろっこしいことなんてせずに、浄化してくれればよかったんじゃ? さいごは魔法で綺麗にしてくれたおかげで肌は清潔だ。  うーん、セレスの基準がわからない。    バスルームから戻ったとき、シーツがさらりとしていていつの間に浄化してた? と思ったんだけど、まさか……侍女さんたちの仕事じゃないよね?  僕の下着どこに行ったんだっけ? ねぇ!?    うわ〜っ恥ずかしい……。  まぁすでに朝寝坊させてもらっている時点で、お察しだろう。なんなら勝負下着は彼女たちに用意してもらったからなー。みんなのスルースキルに期待だ。あとでお礼だけは言っておこう。  朝の明るい光のもとで見るセレスの容貌は、相も変わらず美しい。かつては冷然だと思っていた顔も、いまは心なしか満足げな表情をしていると感じるのは僕の欲目だろうか。  愛しい気持ちが溢れて目の前の唇にちゅっとキスをすると、むずかるように眉間に皺を寄せるから可愛くて笑ってしまった。

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