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第2話

 食事を終え食器をシンクへ運んだ時に、キッチンの窓を叩く大粒の雨の音に驚いた。ひどい雨だ、電話のあの子は自宅に帰れたのだろうかと考えた。その時、「おや?」と何かが引っかかった「間違い電話という事は、自分の父親の番号を登録していなかったのか?」と、不思議に思った。  この電話に何か意味があるのだろうかと好奇心からだった、たった今着いた着信履歴の一番上の番号を呼び出した。  「君は無事に家に帰れたのかな」  電話の向こうから聞こえたのは、駅前のざわついた音と雨の音だった。  「え、どうして……」  驚いた声のその主は、どうやらまだ駅にいるようだった。  「お父さんとは連絡は取れたのかな?」  「と、とれません」  声がかなり焦っているようにも聞こえる。  「いや、どうして私の番号に電話をかけてきたのかが気になってね」  「ごめんなさい、悪気はなかったんです。誰かの声が聞きたかった、誰かと話したかったんです」  誰かと話したかったとは、どいう事なのだろう。  「君のご家族は?」  「いません」  「もしよかったら、もう少し話を聞かせてもらえるかい?」  「はい……」  物心ついた時は既に養護施設(ホーム)に居たこと、そこで育ったこと。そして、十八歳になりホームを出て就職したこと。新しい発見の日々の中、その喜びを伝える相手がいないこと。  「そうか、君は頑張ったんだな」  そういうと少し黙り込んでしまった。  「突然の雨で傘もなくて、雨が小降りになるのを待とうと思っていたんです。そうしたら、隣に立っていた大学生が父親に電話をかけて迎えを頼んでいるのが聞こえて、つい。本当にすみません」    一度でいいから同じことをやってみたかったと。たまたま回した番号だったという、息子のふりをしてすみませんと謝ってくれた。  「残念ながら、私には娘しかいなくてね。楽しかったよ」  そうやってしばらく話を聞いているうちに、雨は小降りになったようだ。  「あ、雨あがってきました。ありがとうございました、久々に誰かとこんなにたくさん話が出来ました。嬉しかったです」  「亮也君、私も久々に誰かとゆっくり話が出来て楽しかったよ。よかったらまた電話をくれないか?」  そう伝えると、「はい」と嬉しそうにその電話は切れた。  そして、二日後また電話がかかってきた。

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