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第46話

食事を終えて、お店が建ち並ぶ通りを散策する。お土産も探しながら、景さんと買い物を楽しんだ。 「さすが、龍をモチーフにしたグッズがたくさんありますね」 「だな」 そのとき、雑貨屋で可愛い龍を刺繍した小銭入れを見つけた。 「景さん、俺このお菓子買ってきますね」 彼が頷いたので、お菓子と、その下にこっそり小銭入れを持ってレジへ向かう。会計して戻ると、景さんは二枚貝の小物入れを手に取っていた。 「あ、綺麗ですね。中がきらきらだ」 「欲しいか?」 「いやいや、景さんが使うなら俺が買いますよ!」 と、何故か目の前で買う買う問題に発展した。 「……俺も、お前のブレスレットを入れられるものを用意してやりたくて」 「景さん……」 うは、どうしよう。 不意打ち過ぎて嬉しい。「いや~……でも悪いですし……」と言ってる間に、彼はレジへ向かっていた。 行動早いな。内心感心しながら、外のベンチに腰を下ろす。 「ほら」 「わぁ……! ほ、ほんとに良いんですか?」 「使って、時々今日のことを思い出してくれたら嬉しいよ」 景さん……。 やばい。時々そういう可愛いことを言うから、ほんと反則だ。 「ありがとうございます! 大事にします!」 家に帰ったらすぐ、ブレスレットを入れよう。 「景さんにプレゼントもらったの、初めてです。嬉しい……」 「確かに全然用意してなかった。ごめんな」 「何言ってるんですか! いつもご馳走してもらってますし、この旅行がプレゼントですよ!」 慌てて隣に身を乗り出し、頭を下げる。 割れないよう、元の梱包に入れてサコッシュに仕舞った。 「景さん、そういえば俺もお渡ししたいものが」 「お前はプレゼント用意し過ぎじゃ……」 「でも、可愛かったんでつい」 お菓子を入れた袋から、先程の龍の刺繍の小銭入れを取り出した。 「主様みたいじゃないですか?」 「……姿を見たことはないけどな」 景さんは眉を下げながら笑った。 彼の言う通りで、俺達は主様の御姿を直に見たことはない。常に滝の裏、もしくは表から、滝面に映り、うごめく大きな龍の影を見ていた。 声を聞くことはできるが、主様は不可視の存在。俺や景さんのような人間には、触れることはおろか視ることもできなかった。 「主様がいたら、きっとこれぐらい綺麗で可愛いです」 「……そういうことにしとくか」 景さんは龍の刺繍を指でなぞり、くくっと笑った。 「じゃあ俺は、これを主とお前だと思って持ち歩くよ」 ありがとう、と言って彼は微笑んだ。 これもある種、御守りなのかもしれない。彼の手を取り、立ち上がって笑った。 「本当、面白いものがいっぱいありますよね」 「あぁ」 「これ何だろう?」 カラフルで可愛いパッケージの箱が並んでいた為、つい手に取る。俺は裏を見るまでそれがなにか分からなかったが、景さんは気まずそうに囁いた。 「……おい、それコンドーム」 「すみません」 すぐに商品を戻し、何事もなかったように歩き出す。 景さんも軽く咳払いして隣に並んだ。 ひえぇ……店先に堂々と置いてあるから油断してしまった。 でも、そういえば。俺達はもう恋人同士なんだし、“そういう”ことをしてもおかしくない。 景さんはどう思ってるんだろう。 一歩後について、彼の横顔を盗み見た。 俺と、そういうことをしたいって思ってくれてるのかな。 一度浮かんだ疑問は中々払拭されず、ホテルに戻っても顔は熱いままだった。 「景さん、ビール冷蔵庫に入れておきますね」 「あぁ」 部屋で飲む用のお酒とおつまみを片付けながら、お土産も整理する。 「俺荷物まとめてるので、お風呂お先にどうぞ」 「分かった」 今日のホテルは大浴場はないので、部屋のシャワールームで済ます予定だ。彼は頷き、タオルとガウンを持って行った。 「……」 ここでまた、あの一件を思い出してしまう。 旅先でシャワー。って、そういう流れに入るにはピッタリなのでは?

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