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第22話 陽キャたち

 翌週の月曜の昼休み。  一カ月に二回、空き教室を使ってサークルの集まりがある。  絶対参加じゃないんだけど、オレは先輩に会いたかったので、お昼を買ってその教室に向かう。  途中同学年の|田中 篤史《たなか あつし》に会った。 「あ、サークル?」  聞かれて頷くと、「オレも。一緒に行こうぜ」と田中が並んだ。そこにまたもう一人。 「宮瀬くん、田中くん、サークル行く?」 「ああ、里山も行く?」 「うん」  自然とオレの隣に並んだのは、|里山 瑞穂《さとやま みずほ》。  男子もだが、女子にも、まだ心の壁は高い。  手芸部は女子ばかりだったが、あれは、「手芸」という絶対的な共通話題があったから、全然違う。  話に詰まっても、向こうが「あれの作り方は―!」とか、「これ教えて!」とか、手芸で話せたのだ。聞かれるのが得意分野なら、オレでも話せた。  あれを見て「宮瀬ってそんな感じなのに女子に慣れてるよな」とか「ハーレムが」とか。  ばかなこと言う奴が居たが、そんなような中身では、絶対無い。  立ち位置がまずかった。田中と里山の間に挟まれてしまった。  田中も結構なイケメン。茶髪でピアスもついてて、いつもハキハキしてる。里山も、緩くウエーブのオシャレな髪型で、いつもメイクで綺麗にしてる。どっちもモテそうな陽キャ。……というか、このサークルは、そういう人たちの集まりだ。  先輩につられて入ってから、思い知った。  結愛のおかげで、オレも一応そこに入っているのが、なんだかとても不思議すぎる。まあ中身は、まだまだ全然おいついてないのだけど……と少し自虐に入っていると、田中に話しかけられた。 「宮瀬ってさ、高校何部?」 「……なんで?」  ……何でって変だっただろうか。手芸部と言いたくないので、ついつい警戒気味になった。まずかった?と一瞬で思ったオレに、全然気にしてなさそうに田中は続けた。 「なんかさ、このサークル、色んなスポーツ、何でもやるとか言ってんじゃん?」 「うん、そだね」 「オレさぁ、サッカーしかしてこなかったから、他はあんま得意じゃないんだよね」 「そうなんだ。……ていうか、オレ、運動部じゃないからだいたい全部苦手だよ」 「え、マジ? つか、何で入ったの?」 「宮瀬くん、可愛い……」  なんだか面白そうな顔で、田中が笑う。里山もなんだか不思議なことをいいながらクスクス笑ってる。  ……先輩がいたから。とは言えない。 「楽しそうだったから、かな」 「へー。なんかよかった。お前がいて」 「それでよかったっていうのも変だけどね」  思わずツッコんでしまうと、田中が笑った。 「はは。運動頑張ろうぜ、一緒に」 「うん。まあ、下手なりに頑張ろうかな」  田中は面白そうに笑ってる。  ……へー。  話してみると、結構普通かも。 「オレ、マジでサッカー以外の球技が全然無理でさぁ」 「あ、オレはサッカーも苦手だから」 「私もテニス以外はあんまりだよー」 「そうなんだ。マジでよかった。意外と皆そうなのかな」  なんて、運動下手同士で気があった感じで楽しく喋りながら、サークルの集まりの教室に着いた。  教室の中に入ると、入り口近く教壇の近くに先輩たちが居たので、こんにちは~と挨拶をしながら中に入る。白川先輩の姿も見える。オレと目が合って、ニコッと笑ってくれた先輩に胸がドキッと弾む。  ――なんかちょっと特別な気がしてすごく嬉しいような。 「あっち座る?」 「ああ。うん」  田中と里山が空いてる席を指差すので、頷いてその後ろをついて歩きながら、なんだか足取りが軽い。  先輩が少し笑ってくれたぐらいで、オレの気持ちって本当に、簡単に浮上するよな。  多分、先輩の横にいて楽しそうに話してるあの女の先輩とか、他の子たちも、みんなきっとそうなんだろうけど。  ほんと、すごいなぁ、先輩は。  派手な先輩たちの中で、白川先輩は、自然と中心に居る。  そんな様子を見ながら、何となく田中や里山、後から周りに座っていく人達となんとか話しながら食事をとる。隣に座った田中、結構話しやすい。陽キャではあるけど、結構大丈夫かも。  ……もしかして、今まで出会ってきた陽キャたちも、話せば、良い奴だったりしたのだろうか。  オレが勝手に、見た目とかで怖れていて、必要最小限の話しかしてこなかったし。  皆が集まってきた頃、先輩たちが活動の報告をし始めた。  今月と来月の活動の日の確認や、連絡事項を伝えてる。  正直、連絡グループが出来ているのだから、それですればいいと思うのだが、顔合わせるのも大事ってことみたい。 「あと、二週間後、六月末の週末なんだけど」  少し今までの報告と区切って、楽しそうに先輩たちが話し始めた。  このサークルの会長は、|冴島《さえじま》さんという三年生。良く通る声の、完璧モテモテの陽キャだ。  よく、白川先輩が隣にいる気がする。仲良しみたいだ。……というか、先輩は皆と仲良しだけど。 「急なんだけど、夏休みは里帰りする奴も多いし、試験前に合宿しようってことで話が上がった。去年も行ったキャンプ場でバンガロー借りて、カレー作りながら一泊しようって言ってる」 「へーキャンプだって」  田中が隣で言うので、うん、と頷く。  キャンプか。……陽キャ軍団とキャンプか。  ――修行、かな……??

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