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第15話 暴露……。

「協力って、たとえばどんな……?」 「まだわかんないけど……なんかいい作戦、考えたら」  石井が言うと、里山がふふっと微笑んだ。 「京香ちゃんも分かってないみたいだしさ。とりあえず今日は寝よっか。明日も早いみたいだし」 「あ、うん。そうだね……」 「貴臣も。寝よ」  立ち上がりながら言った里山の言葉に、渋々石井も立ち上がり、オレもホッとしながら立ち上がった。 「瑞穂ちゃん、宮瀬くんのこと呼び捨てなの?」 「うん。まあ」 「あ、もしかして……付き合ってたりする?」  石井がオレと里山を見比べて、口元を押さえている。  オレが何か言うより先に、「違うよ、全然」と里山が笑って答えた。ちょうど女子のバンガローにたどり着いた時、里山がオレの隣に並んで、小さな声で石井に向けて言った。 「ちょっと貴臣と内緒話があるから、京香ちゃん、先に入ってて。ごめんね!」 「えーあやしい……」 「うふふ。おやすみーすぐ戻るから」  バイバイ、と明るく手を振ってる里山の横で、おやすみと言って、石井を見送った。 「貴臣、ちょっと向こう行こうよ。あかりあるし」 「ああ」  再度調理場のテーブルのところに座ると、苦笑しながら里山は言った。 「なんかごめんね、変なこと頼んで、京香ちゃんが」 「……笑ってたでしょ、里山」 「えーだって、なんかすっごい面白い顔してるから、貴臣が」 「え、そんな顔してた?」 「うん。してた。何考えてた? あの時」  オレは、少し考えて……。 「ああ。恋愛の協力なんて、人選ミスだって、思ってたかな……」 「ああ……」  ぷぷ、と笑い出して、里山は、納得、と言ってくる。 「そんな顔してたー、何でオレ、みたいな」 「だって、オレ、そんなことしたこと無いし」 「ぽいよねぇ、貴臣」  クスクス笑って、楽しそう。  ――里山は、可愛い。笑ってると、すごく。  こんな可愛い子に、貴臣呼ばわりされて、こんな暗いなか、二人きりでいて。  ……まあ、ちょっと雰囲気が結愛に似てるっていうのが関係あるかもだけど、でも。  それを抜いても、オレは、里山に、ドキドキしない。  見ていて、可愛い顔だな、とは思う。でも、なんか、それはただ可愛いだけ。  先輩を可愛いって思うのは……  何て言うか……。  感情が、おもいきり、可愛いと結びついてしまって。  さっきは、抱き締めたいなんて思っちゃったよな……。  そういうのが、全然違う。  なんかへんなことで、自分の感情を確認していると。  里山が、ふふ、と笑いながらオレの方を向いた。 「ね、貴臣」 「ん?」 「協力、しなくていいと思うよ」 「え? あ。……いいのかな」 「うん。したくないでしょ?」 「まあ、絶対的に向いてないし、もしかしたら、逆効果なことしちゃうかもだしね……」  そう言ったら、里山は、クスクス笑い出した。 「そういう意味じゃないよ」 「……ん?? どういう意味?」 「ほら。恋敵の協力なんて、しないほうがいいよってこと」 「――――」  しばらく考えて、オレは、ぱっと目の前の、ニコニコの笑顔を見つめた。 「恋敵?」  ちょっとドキドキしながら聞き返す。  うん、と里山は頷いて、微笑んだ。 「……違う?」 「違う」 「あ、そうなんだ。そっか、違うのか」  ふうんそっかぁ、と何度も頷いている里山。  虫の音が、急に大きく聞こえた。  そのまま終わらせようと思ったのに。  はぁ、と息をついて、オレは、小さく言った。なんだかすごく、手が冷たい。 「……とは言えないかも」  分かりにくい言い方で言ったオレの言葉を少し考えてるみたい。少し、沈黙が流れた。  それから、はっ! という表情で、目を大きくして、オレを見つめた。 「まだ分かんないけど」 「……ぁ、やっぱり、そうなんだね」 「いや、まだ、分かんないけど」 「そっかぁ。なるほど。大丈夫だよ。私、誰にも言うつもりないから」 「……まだ分かんないし、どうするつもりもないから。ていうか……何で、そんなこと思ったの?」 「うーん。ほんとに偶然なんだけど……」 「うん……?」 「私、よく二人を見かけててね」 「――――?? どこで?」  何を見られていたんだろう。  見られて困るようなこと、別にないよな? と思いながらも。  めちゃくちゃドキドキしてきた。

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