53 / 59

第2話 久しぶりかどうか。

     結愛とも話して、担当者の人とも打ち合わせして、結果決まったのは「ちびぬい」 「針も糸も使わないちびぬい」というワークショップ名になった。  オレが「小さいぬい」を連呼してたら、結愛が「ちびぬいでいいじゃん」と笑って決まった。  シンプルで分かりやすいし、分かりやすいし、こどもも「ちびぬい」に惹かれてくれるんじゃないかと思う。  販売用は、後輩たちと手分けして作る。  ワークショップ用の素材も、切り分けたりするのは、後輩たちと一緒に作業することになった。  ワークショップは、事前申し込みを受け付けることにして、一回二十分。十人まで。結構申し込みがあるらしく、五十人分は用意することになった。少し空きが出たら、当日、呼び込みしてもいいらしいから、もう少し多めに用意しないといけない。  市民館みたいなところの屋内で、部屋の一角を仕切って、大きな机をいくつか借りるらしい。周りでも他のワークショップがあるそうな。どんな空気なんだろう。……そんなところで教えるとか、早まったかなと、思わなくもないが、もうやるしかない。  テストが終わった日、結愛から連絡が入った。 「高校に頼んでみたら、家庭科室でやらせてくれるって。お兄がぬいづくりを教えてくれるって名目で。即オッケイだったよ!」 「そんなことできるの?」 「え、だって、バド部だって、先輩が教えに来たりするもん。できるんじゃないかなーって思ったら、即オッケイだった。文化祭で売れる、みたいなこと言ってたよ」 「うわーなんか、嬉しいね」 「……そうだね」  結愛がクスクス笑ってた。  それからはその集まりまでにそろえなきゃいけない、型紙や布、フェルト、手芸ボンド、綿や目、可愛くするためのリボンなどなど……。  必要なもののリストアップと購入。    結構考え始めたら細かくて、なんか漏れてそうで、めちゃめちゃ考えることになった。  それが落ち着いてきたら、先輩に連絡したくてしょうがなくなってくる。  テスト、終わったし。もう、いいよね。連絡しても。  高校の集まり、準備してるとことか、作業風景とか、写真に撮っておいてもらえたら、いろいろ使えるって。結愛も、言ってたし。  ……ちがうな。結愛が言ったから、じゃなくて。  オレが、会いたい。  ミーテイングも、友達とテストのこととかであれこれ考えてたら、行けなかったから会えなかったし。  もう、先輩に会えなかった期間、ほんと、大学のどこにいてもきょろきょろしてしまった。    先輩の髪型とか服に似た人で、何回振り返ったか……顔は全然似てなかったけど。  心がしぼんでいくような、気がした。  スマホを握り締めて、先輩の画面。 「先輩、お久しぶりです。元気ですか」  ……打ち込んで、変かな? と首を傾げる。  たかが二週間ちょっと……慌ただしいテスト期間。  もしかして、先輩は、全然久しぶりとは思ってないかもしれない。  オレのこの「久しぶり」感は。正直、三日目くらいからあるから超長かったけど。  ずっと先輩、どうしてるかなあ、と考えていたし。  一文目から悩んでなかなか進まない。

ともだちにシェアしよう!