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第2話 久しぶりかどうか。
結愛とも話して、担当者の人とも打ち合わせして、結果決まったのは「ちびぬい」
「針も糸も使わないちびぬい」というワークショップ名になった。
オレが「小さいぬい」を連呼してたら、結愛が「ちびぬいでいいじゃん」と笑って決まった。
シンプルで分かりやすいし、分かりやすいし、こどもも「ちびぬい」に惹かれてくれるんじゃないかと思う。
販売用は、後輩たちと手分けして作る。
ワークショップ用の素材も、切り分けたりするのは、後輩たちと一緒に作業することになった。
ワークショップは、事前申し込みを受け付けることにして、一回二十分。十人まで。結構申し込みがあるらしく、五十人分は用意することになった。少し空きが出たら、当日、呼び込みしてもいいらしいから、もう少し多めに用意しないといけない。
市民館みたいなところの屋内で、部屋の一角を仕切って、大きな机をいくつか借りるらしい。周りでも他のワークショップがあるそうな。どんな空気なんだろう。……そんなところで教えるとか、早まったかなと、思わなくもないが、もうやるしかない。
テストが終わった日、結愛から連絡が入った。
「高校に頼んでみたら、家庭科室でやらせてくれるって。お兄がぬいづくりを教えてくれるって名目で。即オッケイだったよ!」
「そんなことできるの?」
「え、だって、バド部だって、先輩が教えに来たりするもん。できるんじゃないかなーって思ったら、即オッケイだった。文化祭で売れる、みたいなこと言ってたよ」
「うわーなんか、嬉しいね」
「……そうだね」
結愛がクスクス笑ってた。
それからはその集まりまでにそろえなきゃいけない、型紙や布、フェルト、手芸ボンド、綿や目、可愛くするためのリボンなどなど……。
必要なもののリストアップと購入。
結構考え始めたら細かくて、なんか漏れてそうで、めちゃめちゃ考えることになった。
それが落ち着いてきたら、先輩に連絡したくてしょうがなくなってくる。
テスト、終わったし。もう、いいよね。連絡しても。
高校の集まり、準備してるとことか、作業風景とか、写真に撮っておいてもらえたら、いろいろ使えるって。結愛も、言ってたし。
……ちがうな。結愛が言ったから、じゃなくて。
オレが、会いたい。
ミーテイングも、友達とテストのこととかであれこれ考えてたら、行けなかったから会えなかったし。
もう、先輩に会えなかった期間、ほんと、大学のどこにいてもきょろきょろしてしまった。
先輩の髪型とか服に似た人で、何回振り返ったか……顔は全然似てなかったけど。
心がしぼんでいくような、気がした。
スマホを握り締めて、先輩の画面。
「先輩、お久しぶりです。元気ですか」
……打ち込んで、変かな? と首を傾げる。
たかが二週間ちょっと……慌ただしいテスト期間。
もしかして、先輩は、全然久しぶりとは思ってないかもしれない。
オレのこの「久しぶり」感は。正直、三日目くらいからあるから超長かったけど。
ずっと先輩、どうしてるかなあ、と考えていたし。
一文目から悩んでなかなか進まない。
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