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第8話 変わってない?

     先生が軽い説明をして、「帰る時は声かけて」と言い残して教室を出て行くと、結愛がすぐにオレを見た。 「お兄、挨拶しようよ。皆まだ、お兄だって信じてないから」 「……超嫌だ」 「いいから早く」  退けない雰囲気。周りではクスクス笑っている子もいて、先輩を見て小さく「キャー」と囁く子たちもいる。  確かに何か言わないと始まらなそうで、仕方なく前に出た。  先輩が、結愛の横に立って、こっちを見てるから余計に緊張する。  現・手芸部は制服。大学一年の同級生は私服で、皆、化粧をしていて、雰囲気がだいぶ違う子もいた。 「元部長の宮瀬です。……お久しぶり、です」  そう言うと、久しぶりーという声が帰ってきた。昔の雰囲気を思い出して、ほっとした。 「一緒に来てもらったのは、大学の先輩で、白川陽彩さんです。今回は写真を撮ってもらいます。もし写りたくない子がいたら、こっそりオレに言ってください。顔が分かる形で外に出すつもりはないので安心してね」  うんうんと頷く皆の顔に、また安心する。 「今回……結愛とここに居る先輩が、オレのぬいをSNSにあげてくれたことで、イベントの人から連絡が来ました」 「先輩、すごいー!」 「いつかそうなると思ってましたー!」  そんな声が飛び交うので、思わず「え、そう?」と素で返すと、教室に笑いが広がった。 「えーと……イベントは再来週の土日。ワークショップは土曜日だけです。今日は、ワークショップ用の準備を出来たら終わらせたくて……あとは、各自家で作ってもらう、ぬいを一回作ってもらいたいです。販売用とワークショップ用のものが混ざらないように並べたい、です。やり方もプリントを作ってきたのでそれで……まずじゃあ、分けて並べてみてからまた話します」 「はーい」 「あと、今回は、正直どれだけつくれて、売れるのかも分からないし、ワークショップの売り上げも未知数なので……もしかしたらただ働きに近くなったりするかもだけど……えーと……それでも大丈夫? もちろん売り上げがでたら……」  途中で言葉を遮られて、皆が言い出した。 「今回は、売り上げがーとか、求めてきてないですよ~皆でイベント参加してみたい!っていう感じです」 「そうそう、私たちもいつか、そういうの出来たら嬉しいし」 「勉強させてもらう感じなので」 「お金とかは貰う気はないです。これは、全員一致です」  うんうん頷いてる皆に、ちよっと胸が熱くなりながら。 「……皆が、ご飯とか行けるくらい出たらいいなとは思うんだけど……」  そう言うと、オレが部長を引き継いだ、五十嵐さんが「部長!」と手を挙げた。 「部長じゃないけど……どうぞ」 「皆がご飯にって……部長は行かない感じで聞こえるんですけど」 「え。……あ、うん。そう。皆で行った方が楽しいかなと思って」 「あー」 「先輩、変わってない……」 「中身いっしょ……」  クスクス笑われて、頭を掻いてると、先輩まで笑ってるのが見えて、んん、と言葉に詰まった。

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