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第11話 のぼせる
午前中で、販売用のぬいの練習と、材料を分ける作業は終了。
早めのお昼を食べてから、午後は、ワークショップの練習と材料の準備をすることになった。
まず皆にお客さんになってもらって、オレが説明する。
ボンドでくっつけながら、綿を入れる。髪の毛のフェルトや、まん丸の目を手芸ボンドでぺたりと貼る。針も糸も使わなくても、十分に可愛いぬいぐるみができあがる。
「できた? できなかった人はいないと思うんだけど……ちびっこもできるかなぁ」
「できると思います」
「うんうん、小学生くらいなら全然大丈夫ですよ~」
「ていうか、めっちゃ可愛い……」
「結構髪の色とか、洋服も変えると違うのが出来上がりますね」
「ね。だから、結構色んなの材料としておいておきたいよね……」
んー、と考えていると、パシャ、とカメラの音。
目を向けると、先輩が綺麗に微笑んだまま、カメラを構えている。
作業風景をと言ってるけど、先輩、面白がって、絶対オレのこと撮ってる気がする。
写真は苦手なのだけど。
「陽彩せんぱーい」
「はいはい」
「撮ってくださーい」
「うん」
……何やら、既に女子高生たちの間で、先輩を「陽彩先輩」と呼んでいる子が居る。結構居る。
すごすぎる……。
そういえばさっき、先輩がよろしくって言ったあと、「写真に写りたくない子、いる?」と聞いたら。
「むしろ撮ってください!!」
「お願いしますっ!」
「一緒に写りたいです!」
一斉に上がった声に、家庭科室が一瞬でお祭りみたいになっていたっけ。
……まあ。
女子高生には、先輩はすごく大人に見えるだろうし。カッコイイと思うよな。
分かるよ。うん。ものすごくカッコいいもんね。
その時、ドアが勢いよく開かれて、「おーい、差し入れ~」と、先生が入ってきた。
やったーと皆、大喜び。
机に並べられる小分けのお菓子たち。
「わーありがとうございます、先生~!」
「えー何から食べようかな」
皆が楽しそうに袋を漁っている横で、オレもひと息ついた。端においた荷物のところで、ペットボトルのお茶を飲んでいると。
「宮瀬、オレ、コーヒー飲みたいから買ってくるけど。いる?」
「自販機の場所分かるんですか?」
「今、結愛ちゃんに聞いた」
「ぁ、でもオレも一緒に行きます」
皆にいってらっしゃーい、と言われて、教室を出た。廊下は静かだ。
「――なんかあの部屋とここ、温度差すごいですね」
「うん。そうだね。皆楽しそう」
「ですね」
「良かったの、抜けて」
「あ、ちょっとオレ、息抜きしたくて」
先輩は、ふ、とオレを見つめた。
「疲れた?」
「……はい」
「そっか」
あは、と先輩が笑う。
なんか、人の輪の中にいる自分が、すごく不思議だ。
「まああれは疲れるよね。でもちゃんとやれてるから大丈夫」
「ちゃんとできてますか?」
「うん。出来てる」
先輩は、ふふ、と笑って、オレを見つめる。
「ぬいが可愛いから部長になったとか言ってたけどさ。面倒見良いし、優しいし、ぴったり」
「……のぼせるんでやめてください」
「あはは」
ほんと、心臓が変な音をたてる。
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