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第13話 過去の恥?
先生は、楽しそうに笑ってオレを見て、頷いている。
「言わなくていいって言っといて、やっぱり部長として締めてってオレが言わせたんだよなー」
「……あれ、なんだったんですか?」
いまさらだけど恨めしい気持ちがよみがえりつつ聞くと。
「挨拶用意しといてって言ったら、お前、当たり障りのないこと、紙に書いてきて、読みそうだったから。つまんないなーと思って」
「ええ……なんですかそれ」
すごく嫌な声が出てしまった。三人、ぷ、と同じタイミングで笑ってる。
「何て言ったの、宮瀬」
先輩が面白そうに聞いてる。
「急だったんで、いっぱいいっぱいで……覚えてないです」
「えー残念」
すると先生が面白そうに口を開いた。
「オレは覚えてるよ。ちょっと笑ったし……まあ、感動したし。ついこないだも、皆とその話になってさ」
「え?」
先生は思い出し笑いをするみたいに目を細めた。
「『地味って言われる部活だし、オレが部長だったのも間違いだったと思うし……人前苦手だし、まとめるのも下手で、迷惑かけたと思うけど……でも、作ったぬいぐるみとかで、少しでも笑ってくれる人がいるなら、ちょっと救われるっていうか。文化祭は楽しかったなと思ってます。一応部長として引退できたのは、皆のおかげ、ありがとう』――って、言ってただろ」
「……あ」
オレの声が裏返った。言った。言った気がしてきた。
「思い出してきました……」
すげー卑屈な感じの挨拶……。
その時、横で笑っていた先輩が、ふっと柔らかく言った。
「……でも、宮瀬らしいね」
「あぁ……卑屈ですもんね、間違いとか……」
うう。と、過去の恥に苦しんでいると。
「違うって。卑屈っていうか……正直っていうか。誰かを笑顔にしたいって思えるのも、宮瀬らしいと思う」
優しい声でそう言ってくれるから、ますます恥ずかしくなる。
「なんか先輩はいい方でとってくれてますけど……」
すると先生もオレを見て、笑った。
「確かに部長が間違いだったって挨拶してたのは、皆笑ってたけど……間違いじゃないって皆思ってたから笑ったんだし。地味だけど、人を笑顔にできるっていうの、皆、結構、じーんとしてたよ」
「――本気で言ってますか、先生」
思わず突っ込むと、横で結愛が小さく笑った。
「お兄の挨拶、お兄らしくて笑っちゃう」
その声に、また恥ずかしくなって、言葉に詰まる。
隣で先輩がオレを見上げた。
「ほんとにすっげー、宮瀬っぽい挨拶。……ていうか、宮瀬しか言わないやつじゃない?」
「部員も皆、同意見だったよ。部長ぽいって」
そこ三人で、何やら楽しそうに笑い合っている。
はー。
何が、「らしい」んだか「ぽい」んだか分からないが、すごく恥ずかしくて、居た堪れない。
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