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第15話 たまにエスパー
駅で結愛と別れて、電車で地元の駅に帰ってきた。駅前でなんとなく立ち止まって空を見上げた。
もうピンクとオレンジが混ざり合う、夕暮れ時だ。
「もう夕方ですね……先輩、一日、ありがとうございました」
「楽しかったから。いいよ」
「……ほんと、いつもそう言ってくれるんですけど……あの、無理な時は、無理って言ってくれていいですからね?」
「――ん」
「なんか、先輩、良い人だから……無理してる時もあるんじゃないかなとか。今日もほんとはバーベキューもあったのに、とか……」
ああ、これ、言わなくていい奴じゃないかな、もしかして。
せっかく来てくれてるんだから、こんなの言わないで、ありがとうで済ませればいいのに、オレって。
先輩はオレを見て、なんだか不思議そうな顔で止まっている。
その顔を見て、ますます焦って、どうしようかと思った時。先輩は、ぽん、とオレの背中を叩いた。
「……今、言わなきゃよかった、とか。思ったりしてた?」
えっ。何で。
先輩って……やっぱり、たまにエスパーな気がする。
ぽかんとしたオレの顔を見た先輩が、ぷ、と笑ってる。
「――ほんとに思ったなら。次は、言わないようにしたら?」
先輩は、んー、と腕を伸ばして、背を伸ばした。
「宮瀬のネガティブ? っぽいとこさ。オレは、面白いし。なんか癒されちゃうから、いいんだけど」
ぷぷ、と笑って、先輩はオレを覗き込む。
「……多分、今イイ感じに変わって、頑張ろうとしてるとこだと思うから――今みたいなさ、言わなきゃよかった、と思ってる顔で話すのは、やめたらいいんじゃないかなぁと、思って」
どこまでいい人なんだろう。
何も答える言葉が浮かばないまま……ただ、じーん、と浸っていると。
「余計なこと、言った……?」
「いえ。……あってます。オレ今、これ言わなくていいのかもって、思いながら話してました」
「うーん? まあ別に言ってもいいんだけど。宮瀬が言いたくないって思うなら、言わない方がいいのかなぁって感じかな」
「……はい」
「あ、オレは、いいよ。宮瀬の、たまに、ごーーーって面白いこと言うとこ、面白いから。ふふ」
「面白くはないですよね……すみません」
「え、なんで? 面白いよ?」
ふふ、と笑って、先輩がオレを見上げる。
「あ、じゃあさ、宮瀬」
「はい?」
「……へんなこと言っちゃったらさ。最後に『……っていうのは、冗談で』ってつけたらどうかな」
「――――」
ふふ、と笑う先輩に、少し考えてから、なるほど、と頷く。
「ちょっと、考えておきますね」
そう言ったら、先輩、クスクス楽しそうに笑いながら頷いた。
「宮瀬、どうする? もう帰る?」
「先輩は?」
「ご飯は――?」
と、その時だった。「あれー?」と後ろから声が飛んできた。
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