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第16話 いつか
「あれ、陽彩じゃん」
「あ、ほんとだ。陽彩ー!」
あ。サークルの二年の先輩達。ってことは……。
この人達がバーベキューの人達……? って、あんまりよくないのでは。出くわしたくなかったな。かなり、ドキドキしてしまう。
「ああ、皆、今帰り?」
先輩は、特に悪びれることもなく、先輩達に向き直った。
十人位、いるだろうか。なんやかんや言いながら、近寄ってきた。オレはなんとなく、先輩の後ろで、皆に囲まれる先輩を見ていたのだけれど。……本当はもう隠れてしまいたい気分だったが、さすがにこの距離では隠れても無駄だし……。
当然、皆がオレに気づいた。
「あれ、宮瀬?」
「二人一緒だったの?」
「オレらを断っといて、宮瀬といたの?」
「なんで?」
矢継ぎ早に飛んでくる声に、オレはかなり、心臓が痛い。
とくに言葉は出てこない。先輩がすぐに答えてくれる。
「ああ、ちょっとね。っていうか、宮瀬としてた約束の方が先だったんだよ。だからごめんって言ったじゃん」
「何の約束だったの?」
「バーベキューより優先される約束なんてあんのー?」
「そうだーそうだー」
「まあ。ちょっと、用事があってさ。ていうか。バーべキューが最優先って何なの」
先輩は詳しいことは話さず、明るく笑ってる。
その余裕な感じが。……やっぱり、先輩は、かっこいいけど。
「オレらより宮瀬とんなよなー」
「そうだよ~陽彩くん来なくて寂しかったしー!」
……おそらく先輩たち、結構酔ってる。
「そういえばなんか宮瀬と、仲良くない?」
「そういえば合宿ん時も隣でお菓子、あーんとかしてたな」
……あん時前に居た先輩たちだ……。
ふざけてんのは分かるけど。全員が酔っ払って、わいわい言ってるところにそれを突っ込んでくるのはちょっと。
特に、自分にやましい気持ちがあるので、かなり、引っかかる。
そんな風に言われて、先輩がオレと居るのを嫌になったら、それは困るんだけど……。
「もしかして、なんか、関係あったりする?」
「えーうそー、陽彩くん、あたしと付き合おうよ~」
先輩の腕を引く、女の先輩。
先輩は何も言わずに、一連の話を聞いていたけれど。
「あのさぁ、後輩にも迷惑かかるような悪ふざけはやめろよな」
呆れたように言うと、先輩は自然と、腕に絡まる女の先輩の腕を解いた。
「宮瀬とは用があったの。お前らには関係ないことで」
ぷ、と膨れて見せて、先輩はオレを振り返った。
「ごめん、宮瀬。こいつら酔ってるから。気にしないで」
そんな風に言ってくれる先輩の笑顔に、ちょっと胸が、弾む。
「陽彩、夕飯はー?」
「一緒に行こうよ」
「ごめん、まだ用事の途中なんだ。また今度付き合うからさ」
「夏休み遊ぼうなー?」
「うん、いいよ。じゃあまた、そん時!」
名残惜しそうな先輩達に手を振って、先輩がオレの背中に、ぽん、と手を置いて、少し押した。
「行こ」
「――あ、はい」
……なんかオレ。
全部先輩に任せて、なんか。守られてしまったような気がする。
元はといえば、オレのいろいろを手伝ってくれてるのに。
なんか――このままじゃいやだな。
オレも先輩の役に立ちたいし。
……いつか、なにかの時は。
支えたりできるように、なりたい。
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