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第18話 几帳面
荷物をたくさん持って、先輩のマンションまで歩いてきた。
前に送ってきた時に見たけれど、外観はグレーのタイルの、普通のマンション。マンション周りの植木や花も綺麗に手入れされている。エントランスにはオートロック。
実家が近いっていってたのに一人暮らしで、このマンションってことは、多分実家は余裕があるおうちなんだろうな、となんだか余計なことが浮かぶ。
オレの一人暮らしは、実家からは一時間弱。結愛がしょっちゅう来てる通り、通える範囲なんだけど。
多分陰キャのオレに独り立ちさせたかったんだろうな、と思う。はっきり言われたわけじゃなかったけど、そんな感じだった。オレも、自分で生活できたほうがいいとは思ったから、それが合致。家賃と生活費、これなら出せると言ってくれた金額で決まった。すごく余裕がある訳じゃないだろうから、いつか恩返しできるようになったらいいけど。
「夏休みまで、なんかあっという間だったね」
エントランスからエレベーターに乗ったところで先輩がそう言った。
「そうですね」
「夏休みは何か予定入れてる?」
予定……なんか夏休みの話は、何回か何人かとしたけれど、決まったやつはないなぁ、と思いながら。
「今のとこは、イベントしか考えてないです。サークルじゃない友達が、海とか行こうとか言ってましたけど……」
「けど?」
「海、あんまり好きじゃなくて」
「はは。まあ分かる。あっついよね。人多いし」
「分かりますか?」
「うん。去年はサークルで行ったけど……楽しいけどすごい暑いし疲れた方が覚えてる」
「オレは絶対、疲れの方が上に来そうで」
「まあ分かるけど。ほんとに行くなら、行ってきたら? もしかしたら楽しいかもしんないし」
クスクス笑いながら先輩は、エレベーターを先に降りて歩き出した。
「海パンまずもってないです」
「んー安いの買ったら?」
「……ですよね……というか、オレ、それを理由に断ろうとしてるのかもですね」
「宮瀬―」
苦笑してしまったオレに、先輩はまたクスクス笑いながら、鍵を開けて、ドアを開けた。
「はいどーぞ」
「お邪魔します」
先に先輩の部屋に一歩。玄関で靴を脱いで、そろえた。先輩が家に来た時にそろえてくれてたのを思い出す。
一人暮らしを始めてから高校の時の友達とかが面白半分で来たけど。なかなか靴そろえる奴居なかったから目についたんだけど。
まあうちは、結愛が、靴そろえてないと「玄関が汚い!」ってめっちゃ言ってくるから、全員揃えるけど。
几帳面なんだよなー結愛。
「中入ってっていいよ。荷物、部屋の端っこにおいといて」
「あ、はい」
廊下からまっすぐ奥の部屋に足を踏み入れると。
1LDK。つくりはうちと一緒かな。リビングと寝室は別れてるっぽい。
リビングの窓が大きいから、五階だし、確かに昼間は明るいだろうなぁと思う。
家具は白と木目でなんかシンプル。……余計なものがない。
なんか、結愛とおんなじ感じの几帳面な感じがした。そういうのでも気が合うのかな……。
オレんちみたいな裁縫グッズとかああいう余計なのが……って、あれは普通は無いか。
それにしても、なんか生活感とか……。
なんかいい匂いがするし。
「――感想は?」
ぼーと部屋を見ていたオレに、後から入ってきた先輩はクスッと笑った。
「えーと……オシャレですね。余計なものが無いです」
「オシャレか」
ふ、と先輩が笑う。
「雑誌に載ってても良さそうな部屋ですね……どうしたらこんなに綺麗にしていられるんですか」
「えーそんなに綺麗?」
「とっても綺麗ですね……」
しみじみ。
なんか、部屋って、人が出るよなあ。
先輩は、中も綺麗だって、オレの中では、勝手に確定してしまった。
でもちょっと綺麗すぎかなぁ。
余計なものがない。
……ていうか、ほんとに必要なものしかない?
結愛の部屋は綺麗だけどさすがに好きなものとか可愛いものとか、奥にBLの本とか、かなり並んでるからなぁ。
まあ性格かな……。
「手洗いたいので洗面台は……」
「こっち。タオル、それ新しいから」
「ありがとうございます」
洗面台で手を洗っていると、ふとバスルームが目に映る。
……お風呂上りは、特に、挙動不審にならないよう気を付けよう……なんて我ながら、気持ち悪いことを考えた。
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