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第19話 罰ゲームかと。
丸いダイニングテーブルに腰かけて、先輩と向かい合ってご飯を食べる。
先輩くんを落としたあの日まで、先輩と一緒に居られるようになるなんて、思わなかった。
「なあなあ、宮瀬」
「はい?」
「オレお前に言いたいことがあるんだけど!」
「はい。どうぞ」
なんかちょっと酔ってるかな。苦笑が浮かぶ。
ご飯と一緒に、一本、レモンサワーを飲みだした先輩は、ちょっと赤い。
まあいつも、酔っ払ってる人を世話する中で、先輩は世話したことはないから、多分楽しく酔って終わるタイプだと、思うのだけど。
「あのさ。宮瀬は、過去の認識から、ちょっと改めた方がいいと思うよ」
「……過去の認識、ですか??」
何のことだろう。
クスクス笑いながら、頷いていると。
「宮瀬はさ、ぬいが可愛いから部長になったって言ってたし、先生が言ってた、最後の部長挨拶も、まとめられないし、部長が間違いだった、とかさ。すごく面白い感じの後ろ向きなこと言ってたけど」
「……面白いんですか?」
そう聞くと、先輩は、しばらく考えてから、ふわりと笑った。
「宮瀬のネガティブは面白いから、暗くならなくていいと思うけど。きっと、その部長挨拶だって、聞いた皆は、クスクス笑ってたと思うんだよね」
「……そうだったかなぁ。前で喋ってたので、人の様子を見てる余裕とか無かったので」
「はは。おもしろ」
先輩はまたクスクス笑ってる。
「でもさ、オレ今日さ、写真撮りながら、いろんな子と話したんだよ。共通の話題が、宮瀬しか無いからさ。宮瀬のこと、よく話してたんだけど」
「えっ オレのことですか? 何を……?」
「宮瀬の大学の様子を聞かれて、オレは、宮瀬の高校の話を聞いてた」
「ええ……そんなこと話してたんですか?」
「ほら、話すことが、ぬいか、写真か、宮瀬、しか無くて……なんか、皆、宮瀬の話をしてくるからさぁ」
あはは、と先輩は楽しそう。
「何かまずいこと聞きましたか……?」
「まずいこと、あるの?」
逆に聞かれて、う、と止まる。
なんかここで自分から話したら、きっと、ドツボにはまるのでは。……ていうか、そんなにいけないことをした記憶もないけど。
「いや……基本的に、静かにしてただけなので」
「うんうん。宮瀬が、いつも同じところに座ってたっていうのは聞いた」
「ああ……」
恥ずかしいな。誰だよ……。
「なんかそれ、皆言ってたよ。なんか、いつもそこに居て、幸せそうにぬい作ってたって」
「幸せそうっていうか……黙ってちくちくしてただけですけど」
「……いや、オレは、見てないけど、きっと幸せそうだったんじゃないかな。だって、皆言ってたもん」
「――――」
えーと……オレはとりあえず食べ終わったものを蓋をして、テーブルの端に寄せた。
「あと、ちょっとびっくりな話は聞いた」
「何ですか?」
「宮瀬が、女の子、振ったって」
がく、と崩れる。ため息しか出ない。
「違うんですよ、それ……なんか、全然知らない子に、好きですって言われて……全然知らない子と、オレが話せる訳ないじゃないですか」
「……」
「だから、ごめんね、とは言いました」
「――なんで、ちょっと付き合ってみようかなーとかならないの?」
「……いや、あの……」
ため息が溢れそう。
「罰ゲームとかかなとも、思って……」
「……えっ!」
先輩はめっちゃびっくりした顔をしている。
「本気で、それで断ったの?」
「いやだって……なんでオレと付き合いたいなんてなるのかって、全然分かんなくて。まだ手芸部の子だったら、少しは、教えたりしてるから……いや、それでも分かんないですけど。でもまだ、もうすこし考えましたけど……」
「……」
「いや、全然知らない子で、しかもどう見ても、陽キャの部類の子で……あ、罰ゲームかな。ていう……あの頃、ちよっとそういう悪ふざけがはやってて、オレも聞いたことがあって」
「わー……そういうことだったのか……」
先輩は、あらららら、と眉を顰めている。
さっきまでの楽しい、酔った感じが無くなっている。
……え、どういうこと?
先輩、何の話聞かされてるんだよ~。もうほんと、これだからコミュ強さんは……。
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