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第20話 過去のオレの差し替え

 先輩は、ため息をつきながらオレを見た。 「それ、罰ゲームじゃなかったと思うよ」 「えっ」 「オレが聞いたのは……宮瀬が手芸部の部長で、……妹の為のぬいが趣味になって、めちゃくちゃ可愛いのをつくるってどんな人って気になった人が、宮瀬のこと見に来て、カッコよくない? ってなったって、言ってたよ。その人、手芸部の女の子の友達なんだって」  それをしばらく黙って聞いていたオレは、最後で首を傾げた。 「高校時代のオレですよね……カッコよくない? てなってる時点で別人なのでは」 「違うってば。宮瀬の話、してたよ」  先輩は、むむむむ。とオレをじっと見つめてくる。 「質問があるんだけどさ」 「はい」 「宮瀬って、今、自分のこと、どう思ってる? カッコいいと、思ってる?」 「――先輩は、カッコいいと思いますよ?」 「いや。オレじゃなくて、宮瀬」  オレは、首を傾げた。 「結愛が、マシになったっていうので……まあ……」 「他人事で人任せすぎる……全部結愛ちゃん任せってどういうこと」  先輩は、じっとオレを見詰める。 「さっき過去の認識からって言ったけどさ。……昔の宮瀬のことは見てないけど、まあ今日、皆が宮瀬を見て、超びっくりしてたのを見ると、昔の外見はたぶん全然違ったのかとは思ったんだけど……」 「そうですね。先生にも誰? みたいな顔されてましたし……」 「ね。……でもさ。ちゃんと部長やってたみたいだしさ、そうやって、ちゃんと宮瀬のことをカッコいいって好きになる子も居たってことはさ、ちょっとはそういうとこもあったんだと思うんだよ。あ、そうそう、その子、カッコいいし優しいって言ってたらしいよ。イイ人って」 「……話したこと、ないと思うんですけど」 「だからね、それは……オレさ、宮瀬ってひっそりいい人って言ってたじゃん」 「……ああ。はい」 「そういうのを見てたかもしれないし。ていうか、宮瀬が優しいのは見てれば分かると思うから……てことはね」  んー、と先輩は腕を組んで、顎に触れて考えている。  ……なにやら一生懸命、オレのことを。  ちょっとおもしろいのと。可愛いし、嬉しい、かも。 「過去の宮瀬も、そんなに悪くなかったってことだと思わない?」 「――――」 「後輩の子たち、言ってたよ。ぱっと見確かに、ネガティブ陰キャの部長だったけど、頼れて優しくて、ぬいが可愛くて、ちゃんとまとめてくれる先輩だってって。それに、背も高いし手も綺麗だし、意外とスペックはいいんだよねーって言ってたら、豹変して現れたって」 「先輩って、今日、一体何の話を聞きにいったんですか……」 「え。だって。皆が話してくるんだもん。勝手に……」  そこまで言って、あらぬ方向を見てから、オレを見て笑った。 「まあ確かに、オレもノリノリで、分かる~! とか言っちゃってたから。それで皆、余計話してくれたのかもしれないけど」  先輩は、残ってたお酒を、ぐい、と煽ってから、オレをまっすぐ見つめた。 「だからさ、宮瀬。過去の自分への認識から、ちょっと直そうよ。ちょっと告られちゃったり、密かに憧れてる子が居ちゃったり。先生にも頼られてたっぽいし。ちゃんと部長もやってた……てことで、記憶を差し替えて?」 「…………」  うーん、と考えた後。 「あまりにオレの過去の映像と違いすぎて、差し替えが出来そうにないんですけど」 「もー……!!」  言いながら先輩は、冷蔵庫の方に歩いていくと、缶を二つ持って歩いてきた。 「飲もう~!」 「……先輩はお酒ですけど、オレはなんちゃってなノンアルなんですけど……」 「いいから気分で酔って~」    ……マジでちょっと酔ってるな。  苦笑しながらも。  なんだか、楽しそうで。  ……ほんと可愛い人だよなぁ。と。   思ってしまう。

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