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第21話 黒歴史

「だから、宮瀬は、黒歴史みたいに語るのやめな?」 「いや、語ってもないんですけど」 「心の中で黒歴史にしてない?」 「……それはそうかも」  じろっと見つめられて、苦笑してしまう。 「まあ……友達が居なかったわけじゃないですし……とくにいじめられたとかもないし」 「部長やってるしね」 「それは……先生はいい風に言ってくれてましたけど、オレ的には――なんとかやり終えてよかった、しかなかったですけどね。部長として、全然うまくはできてなかったので」 「そこを、惜しまれてやめた、みたいな記憶に変えて」 「……ふふ。先輩って、ポジティブですよね」  オレがそう言うと、それまでニコニコだった笑顔が少し曇った。眉を寄せて、どうだろ? と首を傾げる。 「オレ、けっこうネガティブかもよ。すぐ落ち込むし」 「そう、ですか?」 「……でも落ち込んでる顔は、あんまり見せたくないからさ。笑っとけばいいって思ってるだけかも」  ふと突然真面目なトーンで言った後、じっと見つめてるオレの視線に気づくと、あはは、と笑った。 「まあ周りからはポジティブってよく言われるから、そうなのかもね」  先輩は立ち上がると、食事のごみとかを集め出した。 「宮瀬、あっちのテーブルにうつろうよ。お菓子食べるでしょ」 「弁当食べたばっかり……」  言いかけたオレを、先輩は遮るようにきっと見つめて、「たまになんだから一緒に食べようよー」と笑った。 「はい」 「あ、それともアイスにしよっか?」 「はい」  返事をしながら笑ってしまう。  どう見ても、酔ってるな。顔、少し赤いし。先輩お酒、弱いな。  ……いつもなら言わないようなことも、言いそう。 「オレの過去、結構知られてる気がするんですけど」 「んー?」 「先輩の過去もちょっと聞いてみたいです」  ゴミを片付けていた先輩が振り返った。  普段なら言わない、ちょっとおもしろいこととか、言ってくれそう。そう思って言った言葉だったのだけれど。  先輩は、んー、と考えて。 「オレは普通、かな」 「普通、ですか?」  普通か。……普通ってなんだ? 「先輩はきっとどこに居ても人気あると思いますけど。今とおんなじ感じってことですか?」 「んー人気……? 宮瀬って、オレが今、人気あると思うの?」 「はい。……え、違いますか?」 「……まあ。誰とでも喋るし。楽しそうにしてて。みたいなイメージなのは知ってる」  なんだか、含みのある言い方。  いつも明るいし、本当に人気者だし、皆に囲まれてる先輩のイメージは完全に陽キャのトップなのだけれど。  ……そういえば、たまに、違うこと、言うんだよな……。  逆にそっち、聞きだせるだろうか。 「普通、聞いてみたいですけど」 「普通だから。話すこと無いかなぁ……まあ楽しいことも、嫌なことも、それなりにある学生時代だったよ。皆そうでしょ」  ふふ、と笑いながら言って、先輩は冷凍庫からアイスを取り出した。 「まあいつか、そのうちね」 「そのうち……便利ですよね、その言葉」 「――ふふ。ツッコミ厳しいなー宮瀬」 「あ。すみません」  つい出てしまった。なんかちょっと聞きたかったので、つい。  嫌なこと、か。何だろう。なんかそもそも先輩に何か嫌なことが起こらなそうって思ってるオレの思考がおかしいのか。そりゃあるよな、普通に……。 「宮瀬、まだ缶ものこってるけど……コーヒーも飲む?」 「あ、はい。お願いします」 「うん。宮瀬、そっちのテーブル行ってて」 「はい」  残ってる缶を二つ持って、テレビの前に移動する。  グレーのラグの上に置かれた、真っ白なローテーブル。なんか清潔な感じ。ほんと先輩ぽい。  そうだ、と思い出して、さっきのイベントの封筒も、テーブルの横に置いた。

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