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第24話 先輩の過去

 何枚か書類が入っていた。細かい既約やもろもろは後で読むことにして、配布用っぽいパンフレットを手に取った。 「あ、イベントの案内に、他のワークショップとかお店の一覧も載ってますね」 「へえ……あ、これ捨ててくる」 「ありがとうございます」 「宮瀬、もう一本ノンアルあるけど、飲む? オレもあと一本、おいしいレモンサワーが……」 「飲んじゃいましょうか」 「うん」  コーヒーもあるからほんとなら要らないんだけど、酔ってる先輩が可愛くてそう言ってしまった。  二人きりでほろ酔いの先輩と、のどかに話せる機会なんてそうそうないもんな。これくらいいよな。  先輩が冷蔵庫をあけてる間、オレはパラパラとページをめくっていく。 「へえ……アクセサリー作りとかアロマ、おもちゃ作り、紙粘土……陶芸もあるみたいですよ」 「いろんなのがあるんだね」  ページをめくりながら読み上げていると、先輩が正面ではなくて、隣に座った。一緒に覗き込まれて、ドキン、と胸が音を立てた。  どっどっどっ……。心臓の音って、外には伝わんないんだろうか。先輩に見やすいようにパンフを向けながら、オレは、さりげなく少しだけ離れて座り直す。 「へえ……なんかほんとに色々」 「高校生の枠もあるみたいですよ。部活ですかね」 「近所の高校なのかもね?」 「そうですね。あ、青明高校写真部ですって」  先輩も写真部だったもんな、と思って目についたものを読んだ。  隣の先輩の体が明らかに、震えて、止まった。 なんだか、不自然な震え。  ……なんだ? 「青明?」と聞かれて、オレは頷いた。 「はい。県立青明高校写真部。全国大会入賞経験のある部員による、写真の撮り方体験……」  そこまで読んで、ふと気づく。  横にいる先輩の顔が、さっきまでの笑顔とは違う。 「先輩……?」 「……ん?」  なんだか、見たこと無い顔、してる。まさか、と思った気持ちは、確信に変わっていく。 「……先輩。ここ、出身校ですか?」  問いかけると、数秒の沈黙。苦笑のような息を漏らして、先輩は、頷いた。 「……そう。オレが居たとこ」  なんだか言葉が出てこない。すると、先輩は、そのページを見て、小さく頷いた。 「ワークショップ、すごく近そうだね」  そう言われて場所を確認すると、確かに、近い。多分、お互いが見えるところかもしれない。衝立をするかどうか、なんて言ってたけど、うちは空間がひらけていた方がいいかもと言って、断ったんだった。ぬいを静かに作るだけだし、と思ったのだけれど……。まずかっただろうか、と思うくらい。 「先輩……? なにか、ありますか……?」 「ん? ああ。別に。ただ、びっくりしただけ」  もう普通の顔をして、先輩が笑って、レモンサワーを一口。「おいしいー」と笑顔。  ――嘘の笑顔だ。無理してる。  そうとしか、思えない。

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