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第25話 オレみたいな陰キャは。

「あ。そうだ。今日の皆の写真見たい? 見たいよね?」  突然先輩がそう言って立ち上がると、パソコンを引っ張ってきて、ローテーブルの上で開いた。それから、部屋の隅からプリンターも持ってきてテーブルの横に置くと、コンセントを繋げて、両方とも電源を入れた。 「このプリンターさ、すっごく綺麗に写真印刷できるんだよ」 「そうなんですか」 「うん。ちょっと待ってね」 「はい」  パソコンを開けて、パスワードを入れてる先輩の横で、オレは、パンフレットに視線を落とした。  高校の写真部。……カメラをやめた理由、なんて言ってたっけ。  コンテストとか……? そのほかにも何かあったのかな。  今はもう、先輩は、明るく普通の顔をしている。 「これ、今日の、集合写真ね」  パソコンの画面にいっぱいに写った写真。 「わ。いいですね」  やっぱり全然違うかも。集合写真なんてよく撮られるものだけど。並んで笑顔にさせるまでの、先輩の声かけとか、雰囲気が良かったのかな。とにかく皆がすごく笑顔だった。タイマーをセットしてからオレの隣に滑り込んだ、先輩の笑顔。オレも、ちゃんと、笑顔だ。  皆の楽しそうな笑顔を、そのまま切り取ったみたいな写真。 「プリントしてみる?」 「はい、ぜひ」  そう言うと、先輩が印刷ボタンを押す。プリンターが低く唸って、カタカタとローラーが回る音。ウィーンと印刷している音がする。  その間に、先輩が今日ずっと撮ってくれていた写真を、一緒に追っていく。 「わー、皆楽しそうですね」 「うん。……ここらへんとかさ。顔が映らないようにとったから、使えるかもね」 「ですね。にしても、顔が映ってないのに、笑顔でやってるんだろうなーっていう、雰囲気の写真。すごいですね」 「――そう? ありがと」  何枚か、先輩が写真を印刷していく、  先に一枚大き目の集合写真の印刷が終わった。はい、と差し出してくれたのを受け取る。  画面で見るのとも、かなり違った。余計生き生きして見える。 「先輩の写真って、皆が楽しそうで、いいですよね」 「……そう?」 「はい。なんか、見てるだけで、その時の雰囲気がちゃんと伝わってくるっていうか」 「皆、楽しそうだったんもね」 「それがちゃんと映ってます。キラキラして見える。すっごくいいです」 「ほめすぎ……」  先輩が苦笑しながら、後から出てきた、普通のLサイズの写真を数枚、テーブルに置いてくれる。  どれもこれもほんといいなあ。  渡される写真全部、顔が綻んでしまう。 「あれですね。きっと、先輩が楽しそうに撮ってるから、こういう写真なんでしょうね。見てる人まで、一緒に笑っちゃうような……ほんと、絶対笑顔になりますよ、この写真、見た人」 「……そう?」 「はい。オレ、やっぱり先輩の写真が好きですね。……写真のこと、全然分からないですけど。とにかく、すごく好きです」 「――ん。ありがと」  先輩はオレの方は見ず、パソコンの画面を見てる。  オレは、先輩が渡してくれた写真を見てる。  視線は、あえて、絡ませない。  なんだかそんな雰囲気だった。  ――オレみたいな陰キャはね、先輩。  人の視線が気になったり、自分を出すのも嫌いだし。  相手が自分をどう思うかに敏感だからさ。  すごく――周りを見てるんだよ。空気に敏感な陰キャって、多いと思う。  反応が気になるがゆえに、自分を出せない、みたいなさ。  まあ少なくとも、オレは、そうだから。  周りの人の空気とか。分かる方だと思う。  まあ分かったからって、それに対して、良いと思うことをできるかって言われたら、出来ないのがオレだけど。  まあでも、結構見てるんだよ。周りを。  だから。  ――先輩が今、どんな雰囲気か分かる。  そんな風に笑顔でも。  お酒がおいしいとか笑ってても何かを考えているのも分かる。  とは言ってもね……言いたくないことくらい誰にでもあるし。  先輩が言ってこないのに、オレが聞けるか……? 聞いていいのか?  話したくもないことかもしれない。少なくとも、完全に吹っ切ったって顔はしてなかった。  ――でも聞かない方が良いのかな、とも思うから。   どうしたらいいか、迷う。  先輩が言いたくないことを、無理に引き出すのは、ただの迷惑かもしれない。  それも分かってる。  でも、このままやりすごしたら、ずっと心に引っかかる気がする。  どうしたらいいんだろうな。

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